非常識な熊本区政の決算認定に反対する |
自公政権から民主党を中心とする鳩山政権に代わり、世田谷区議会の中でも様々な動きが出てきました。その変化を象徴するのは、決算委員会の段階で初めて、給食費会計が認定不同意となったことです。
3名の小会派である会派「政策会議」は会派の立場としては給食費会計に反対していましたが、決算委員会では政策会議の1名が採決に棄権しましものの、全体では反対が多数をしめ、否決されました。ところが、本会議に至って、棄権に回った1名が今度は賛成に回ったため、可否同数となり、議長裁量で同意認定となったのです。理事者側の説得があったのでしょうが、このスレスレの状況は国政の政権交代効果と云うべきでしょう。
そういった状況を踏まえつつ、反対討論をおこないました。
<以下は議事録です。>
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平成20年度決算認定に対する反対討論(2009年10月20日)
○川上和彦 議長 これより意見に入ります。
意見の申し出がありますので、順次発言を許します。
なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。
二十三番木下泰之議員。
〔二十三番木下泰之議員登壇〕
◆二十三番(木下泰之 議員) 決算認定すべてに反対する立場から討論を行います。
今回の議会で、私は一般質問において、熊本区長が昨年八月より本年八月末の総選挙が終わるまで、この総選挙で落選することとなった自民党代議士の越智隆雄氏の後援会長であったことについて、こういったことはふさわしくないのではないかのと、区長としてのその道義責任をただしました。
熊本区長は、越智候補の落選の責任をとって、選挙の翌日、後援会長をおやめになったと答弁されておりますが、まさに選挙の当落の責任を問う立場、候補者と一心同体となる後援会長という役割を担われていたわけであります。これでは区民目線ならぬ自民党目線、あるいは越智隆雄目線で仕事をしてきたし、しているととられても仕方がありません。
決算認定が対象となっている昨年度には、リーマンショックをきっかけに百年に一度と言われた経済危機が訪れ、新自由主義は破綻、米政権はブッシュからオバマに交代し、経済政策においてグリーン・ニューディールが提唱されました。
翻って小泉首相引退後の日本では、安倍、福田と一年ごとに首をすげかえる中で、昨年九月に新たに登場してきた麻生首相は、小泉路線を清算することもできずに、旧来の土建型国家、ばらまき型の明確な戦略を欠いた財政出動を一方では積み重ね、さらには解散総選挙に打って出る機会さえ失って、ずるずると首相のいすにのみ座り続ける結果になったことは周知のとおりであります。
そして、八月三十日の総選挙は、自民党の雪崩を打つような敗北、民主党の歴史的勝利に終わり、今を迎えているわけであります。
このような歴史的文脈の中で、平成二十年度の予算は執行され、補正予算も何度か組まれてきたわけです。
私はここ十年来、選択的成長政策を伴ったエコロジカル・ニューディール政策こそ、日本が未来を切り開く戦略的課題であることをこの議場でも提唱してまいりました。これは、一九六九年にノーベル経済学賞を受けたオランダのヤン・ティンバーゲンに起源を持ち、日本では力石定一法政大学名誉教授などが提唱してきた考え方ですが、オバマ大統領の提唱したグリーン・ニューディール政策もティンバーゲンを底流としていることは間違いないでしょう。
残念ながら、我が世田谷では反対のことが進行しております。熊本区長は、いまだに道路を二倍の速度で整備すると称し、下北沢や二子玉川、経堂や三軒茶屋での大規模再開発や世田谷全域での高層化が、熊本区長の政策によって推進されているのであり、旧来の土建型政策がいまだに横行していると言わざるを得ません。
私が当選以前から取り組んできた連立事業について言いましょう。
連続立体交差化事業は、一見踏切解消事業のように見えるけれども、国の道路特定財源を使う街路事業として組まれてきたというのが真実であり、この事業は、道路新設と駅周辺及び沿線の高層再開発、不動産開発がセットとして推進されてきており、その皮切りが小田急線であり、次にもくろまれているのが京王線本線です。その次には東急の大井町線も控えております。
この連続立体交差化事業で高架計画が好まれるのは、不動産開発促進に好都合だからであり、決して事業費が安いからではありません。むしろ都会では環境に配慮をすれば、高架計画のほうが地下計画よりも高上がりになることは目に見えております。下北沢のように住民の要求を入れて地下化にせざるを得なかったところでは、鉄道の地下化によるのではなくて、新規道路計画が再開発の旗振り役になりますが、高架計画は、高架自体が再開発の直接の旗振り役となり、新規道路計画と相まって、さらに高層再開発を誘発することができることになるわけであります。
小田急問題であれだけ高架反対があり、下北沢地域で地下化が採用されているのに、京王電鉄でいまだに高架計画にこだわっているのは、今述べたような官側やデベロッパー側の事情があるからであります。
熊本区長は都議のころから小田急線の問題には熟知されております。今回の政権交代で熊本区長が一番気にかけていることが連続立体交差化事業であることは、越智代議士敗北の弁を語った際、口をついて出てきた言葉が、きょうの選挙結果が開かずの踏切解消など区民のすべてに影響する、厳しい状況だ、という言葉だったことに私は注目しております。
そして、外かく環状線、この整備問題は、日本の今後の環境行政や道路行政の行方を占う大きな問題です。環境省は、九月九日にいわゆるPM二・五に関し、「微小粒子状物質に係る環境基準の設定について」とする告示をやっと出しました。WHOの勧告から余りにも遅い告示です。CO2の二五%削減目標のみならず、このPM二・五の環境基準の達成という観点からいっても、外かく環状線は、少なくとも区民の生命を守るという区長の言から言えば、ゴーサインを出すべきような事業ではありません。ところが、熊本区長は外かく環状線については推進する立場に明らかに立っております。
世田谷区内に数々ある団地の建てかえ問題では、一団地認定の廃止と周辺の高容積率及び高建ぺい率に合わせた規制の緩和による高層化が促進されており、国有地などの公用地の払い下げにおいても、土地の高層高度利用化が促進されています。このままいきますと、世田谷を特徴づけていた低中層の住宅地は高層ビル、あるいは高層マンションの街に変わってしまうでしょう。
生産緑地についても申し上げておきましょう。
群としての生産緑地などのまとまりを都市計画緑地として指定することによって生産緑地を買い取りやすくする農地保全方針を新たに定めようとしておりますが、生産緑地は、既に平成五年のピーク時の百四十八ヘクタールから、平成二十年の十五年の間には百二ヘクタールへと、四十六ヘクタールも生産緑地を減らしております。生産緑地指定した土地は、本来は区に買い取る義務があるにもかかわらず、これを履行してこず、また、農地買い取りの市民運動を目的として発足させたはずの世田谷トラスト協会も、改組統合された世田谷トラストまちづくりも、これを実行せずに放置したままであったことの反省に立たなければ、今回のプロジェクトの未来も、このままでは決して明るいものではないということを言っておかなければなりません。
区みずからが風景資産とした喜多見の稲荷塚古墳付近から見た三重塔の景観を構成する生産緑地さえ区は買い取らなかったということは、景観行政の放棄と言わなければなりません。また、給田小学校の太陽光発電による光公害防止策の提案についても、区の教育委員会はまともに取り上げようとしておりません。これは非常に問題であります。
さて、コンクリートではなく、人間を大事にする政治にしたいとのマニフェストのもと民主党が圧勝し、鳩山新政権が誕生しました。
新政権は八ツ場ダム中止や各種公共事業の見直しとそのための補償法案の準備、CO2の二五%削減などはこのマニフェストを体現しておりますし、土建産業から林業や福祉産業への産業人口の組みかえ策は、まさに選択的成長戦略にのっとったものですので、歓迎するところであります。官の専横を抑え、政務主導とすることは、党派の独裁とならない限り、おおむね賛成であります。
問題は、八ツ場ダム問題に象徴される一部の地方民主党を巻き込んだ自民党旧勢力とこれを支えようとする古いポピュリズム迎合の一部のマスコミとの争いに、マニフェストをよりどころとする中央の民主党が勝てるかどうかにかかっているというところであると思います。
八月三十日の選挙で起こったことは、市民の一票一票の無血革命であると私は考えております。決して単なる民主党への支持だけで投票行動が行われたわけではないのであります。変革を求めての広範な市民の投票行動であったと思っております。自覚的な無党派の市民の広範な支持が持続し続ける限りにおいて、鳩山政権は仕事をなし遂げることができるであろうと思っております。
さて、世田谷区議会で前代未聞のことが先週起きました。決算議案が決算特別委員会で中学校給食費会計が否決されました。給食費会計で明るみに出た一千六百万円の歳出超過とその処理の問題では、役人の隠ぺい体質が改めて浮き彫りになりました。この隠ぺい体質は、小田急線連立事業や下北沢の都市計画やまちづくり問題で嫌というほど体験してきたことであります。みずからも関与する基礎調査報告書を受け取っていないとか、連立事業の協議会や上部利用検討会で議事録をとらないとか、お役人は常識では考えられないことを平気で言っておるわけです。
このような非常識がまかり通っている以上は、これだけでも決算認定に同意するわけにはいきません。また、道路を二倍の速さでつくると公言する区長の政策に同意することはできません。したがって、区長不信任の意をも込めて、すべての決算認定に反対するものであります。
以上です。
○川上和彦 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。