教育委員任命同意への質疑と意見――川場問題を危惧し区役人の転身に反対する |
教育委員任命同意への質疑と意見――川場問題を危惧し区役人の転身に反対する
○畠山晋一 議長 次に、
△日程第四十三を上程いたします。
〔星次長朗読〕
日程第四十三 同意第五号 世田谷区教育委員会委員任命の同意
○畠山晋一 議長 本件に関し、提案理由の説明を求めます。保坂区長。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 ただいま上程になりました同意第五号「世田谷区教育委員会委員任命の同意」につきましてご説明申し上げます。
本件は、世田谷区教育委員会委員の若井田正文委員の任期が平成二十四年十一月三十日をもって満了となり、欠員となるため、その後任として会計管理者の堀恵子さんを任命いたしたく、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四条第一項の規定に基づきご提案を申し上げた次第でございます。
堀恵子さんは、昭和五十年、世田谷区役所入所以来区政に携わり、学校教育部給食調理場管理事務所長、世田谷総合支所地域振興課長、福祉部児童課長、産業振興部長、区長室長、生活文化部長、総務部長を歴任し、区政の発展に寄与してまいりました。
このように多年にわたる豊富な行政経験と知識、そして力量は、世田谷区の教育委員として任命するにふさわしいと考え、任命の同意を求める次第でございます。何とぞご同意いただきますようにお願い申し上げます。
○畠山晋一 議長 以上で提案理由の説明は終わりました。
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○畠山晋一 議長 これより提案理由の説明に対する質疑に入ります。
なお、質疑についての発言時間は、議事の都合により、答弁も含めて十分以内といたします。
発言通告に基づき発言を許します。
二十四番木下泰之議員。
◆二十四番(木下泰之 議員) 保坂区長にお伺いします。
教育委員会のあり方についての区長の考え方、先ほどの質問にも出ておりましたけれども、とりわけ教育委員会観について見解をお伺いしようと思います。
教育委員会については、独立性を尊重する立場に立つのか、むしろ区長との親密性、連携を維持する立場に立つのか、どちらでしょうか。そのことも含めてお答えください。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 お答えいたします。
本会議の中でも答弁いたしましたが、教育委員会には、今回の人事を通してさらに活発に動いていただきたいと考えています。また、教育委員会は地方自治法や地方教育行政の組織及び運営に関する法律等に基づき、教育に関する事務に関し多岐にわたる権限を有し、責任を負う機関であると認識をしています。
区長部局は、教育における基盤整備、環境整備、こういったことを責任を持って行い、各小中学校が本来持っている力を十全に発揮できるように援助すべき関係にあると考えております。
また、いじめ等の子どもの生命や身体の危機を最悪の道にしないという点では、それぞれしっかり協力連携し合いながらやっていくべきであると考えております。
◆二十四番(木下泰之 議員) 先ほど教育観というふうに聞いたんですけれども、どちらに重きを置くのかということについて教えていただけますか。独立性なのか、連携性なのか、どちらですか。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 教育委員会制度は、やはり教育の内容ですね。学校運営、こういったものは教育委員会が責任を持って運営をしていく。そういう意味では、自立性、独立性を尊重するという立場ですし、また、教育が行われる基盤整備については区長部局の責任である。また、区民である子どもの命がかかっていたり、あるいはその教育全般のさまざまな底上げについては、教育委員会だけではなく、区長部局もこれは熱心に連携してやらなければいけないということで、どちらかと言われても、それは両方であるというふうにお答えせざるを得ないと思います。
◆二十四番(木下泰之 議員) 今回、区の会計管理者を任命しようとしておりますけれども、事実上の教育長人事であるというふうに思います。この人事はどのような観点から行われたのかお伺いします。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 私としまして、堀恵子氏は、若井田教育委員の後任として適材であると考え、議会のご同意をいただきたく提案したものでございます。議会のご同意をいただいた後は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の規定に基づいて、教育委員会が教育委員長を除く教育委員の中から教育長を任命することになっており、教育委員会の判断により、教育長に適任である方を任命されるものであると考えております。
◆二十四番(木下泰之 議員) 被任命者は教育問題につきどのような経歴や見識を持つと考えて任命されようとしているのかお伺いします。どうも経歴を見ると、それほど教育畑にはいなかったような感じがしますけれども、いかがでしょうか。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 任命同意をご提案している堀恵子氏は、教育委員会事務局における勤務経験は短期間ではありますけれどもございました。また、子どもにかかわるという点では、児童課長など経験をされておりますし、また、今回、教育委員会が活発に現在の課題に応えていくという意味では、同種の行政経験や、これまでの識見などを重視して、教育委員会や教育委員会事務局が、より子どもたちのために世田谷区の教育、あるいは学校、地域の底上げのために動いていただけると考えて任命をしたものでございます。
◆二十四番(木下泰之 議員) 三・一一以降の世田谷区立小学校の教育現場での重要問題として川場移動教室問題があります。被任命者は放射能問題や移動教室問題につきどのような考えを持っていると認識しておられるのかをお伺いしたいと思います。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 川場移動教室は、世田谷区にない、群馬県川場村という自然環境のもとで長年継続をしてきた、三十年という長期間にわたる縁組協定を経て、共同事業として実施をしてきたものであります。
ご指摘のように、三月十一日の原子力発電所の事故の影響を川場村も受けることになったということでありますけれども、今回ご同意をいただきたくご提案している堀恵子氏につきましては、区民健康村・ふるさと交流課を所管する生活文化部長の経験も生かして、川場村とも除染あるいはリスク低減について、より緊密な連携をしてくれるものと考えております。ただ、子どもの安全にもこれは十分配慮して、リスク情報も含めて、川場村とも十分な連絡をとりながら、保護者の声に応えていきたい、こういう考えだと受けとめています。
◆二十四番(木下泰之 議員) 区の役人の経験者、役職を歴任された方が例えば教育委員長になられた場合、(「教育長」と呼ぶ者あり)教育長になられた場合、どうもやはり区の考え方をいろいろ背負っていくのではないかというふうに思います。特に生活文化部ということであれば、川場との関係も非常に強いわけですし、そういった意味では、この間、川場村の事業と教育委員会の事業と、それが余りにも一体のものとして映っているので、非常に危惧を感ずるんですけれども、そういうことについて、子どものことを本当に思ってその立場でやっていかれるのかどうか、非常にその意味では危惧を感ずるんですけれども、役人ではなくて、もっと幅広い方を選んでもよかったのではないでしょうか。お一人の方が学校の校長さんの経験者だということであれば、お役人を選ぶのではなくて、もっと違う選択肢があったのではないかと思いますけれども、あえてお役人を選ばれた理由をお聞かせください。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 世田谷区の子どもをめぐる状況ですが、日本全国、子どもが減っていく中で、世田谷区はふえている。したがって、今この傾向が続けば、やはり世田谷区の公立学校の中で、現状でもやはり全国で伝えられているようないじめの問題など、いろんな困難な問題を抱えていると思います。より機敏に、より効果的に、また、子どもの命や安全や、あるいは意欲や可能性を引き出していくために、行政の経験者の中からしっかりその役割を推進していく適任者だと考えて提案をしている次第であります。
◆二十四番(木下泰之 議員) 任命された区長としては、川場移動教室問題について、特に教育委員会にこうしてほしい、ああしてほしいということってございますでしょうか。それを最後にお聞きしたいと思います。
〔保坂区長登壇〕
◎保坂 区長 これまでも川場の安全性について努力をしてきたと思いますが、一層この努力を強めて、また、リスク情報などについてもしっかり保護者の皆さんに伝えていくというようなことも含めて取り組んでいただきたいと考えています。
○畠山晋一 議長 以上で木下泰之議員の質疑は終わりました。
これで質疑を終わります。
ここで、委員会付託の省略についてお諮りいたします。
本件は、会議規則第三十八条第三項の規定により、委員会付託を省略いたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○畠山晋一 議長 ご異議なしと認めます。よって本件は委員会付託を省略することに決定いたしました。
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○畠山晋一 議長 これより意見に入ります。
なお、意見についての発言時間は、議事の都合により十分以内といたします。
発言通告に基づき発言を許します。
二十四番木下泰之議員。
〔二十四番木下泰之議員登壇〕
◆二十四番(木下泰之 議員) 同意第五号に反対の立場から意見を申し上げます。
私はやはり教育委員会というのは独立性が大事だというふうに思っております。今の法律上の中では、任命するわけですから、連携性がどうしても出てきてしまう。連携性がどうしても出てきてしまうということであれば、あえてやはり独立性をきちっと強調して、教育委員会が行政とは違う観点から動いていく、そういったことを支援していくべきであるというふうに思います。
とりわけこの間、私は川場問題で非常に教育問題の新しい側面といいますか、それをずっと見させていただきました。なぜか世田谷区政は教育委員会と渾然一体となっているようなところがある。これではいけないと思うんです。私は最初、川場問題について、保坂区長に意見を申し上げるときに、区長が決めたことではないのであろうと。つまり、教育委員会の独立性があるから、教育委員会のほうでやっていることについて、保坂区長のほうは物が言えないのではないかと思っておりましたが、そうではなくて、何か安全だということをみずからおっしゃって、一緒に川場の移動教室の問題と、それから川場のふるさと公社の問題、これは一体のものだということで行政を進めてまいりました。
堀さんの経歴を見ますと、前の区長室長、熊本さんの区長室長であったりもしているわけですね。それから、経歴も見ますと、産業振興部長であったり、生活文化部長であったり、総務部長、会計管理者という形になっていらっしゃいます。
どうしても私は、やはり独立性を教育委員会に担保していくということであれば、区のお役人をそちらに派遣するということではなくて、むしろ独自に、それこそ幅広い見識を持った方々の中からお選びになって、また、そういうマネジメント、あるいはそういうガバメントができるような民間人もたくさんいらっしゃるわけですから、学者さんの中にもそういう方はいらっしゃると思います。そういう方をお選びになって、世田谷独自の教育委員会が独立した形で、市民と結びついて自由闊達に教育をやっていくと。
教育委員の一番の大事な観点は、子どもが好きだということだというふうに思います。それ以外をおいてないと思います。そのことさえきちっとしていれば、教育委員会の仕事はうまく回っていくのではないか、そういうふうに思います。
そして、そのことを担保するためには、余り区のほうでたがをはめるようなことにはしないほうがよろしいのではないか。そう思いますと、やはり区長部局の枢要な経歴を歴任された方、教育長になるでしょう。これは制度上、特定して任命はしないことにはなっておりますけれども、成り行きからいったら、それは教育長になるでしょうけれども、そういう形をとらないで、やはり独立性を担保するために努力される、そのことが必要だと思います。
そして、保坂区政が新しく誕生したわけですけれども、保坂区長がフリーハンドで人事を入れていけるにもかかわらず、どうも前の熊本区長の区政を踏襲するような形で人事が行われている。このことについては、やはり私はどうも納得がいきません。やはり保坂区長らしい人事を構成したらいいじゃないですか。そこからしか、私は与党か野党か、もうわかりませんけれども、少なくとも少数与党だといったときにやらなければならないことは、まず人事でフレッシュな人を入れて、それで新しい風を区政にも吹かせて、そしてまた教育委員会の中にも新しい風を吹かせていく。それはみずからとは違ったキャラクターの人に独立してやっていただく、そういうことが一番大事なのではないだろうか、そういうふうに思います。
つくづく、何か九五%踏襲ということをおっしゃっているけれども、人事においてもそういうことであってはならないのではないかと思いますので、私は別に堀さんに恨みがあるわけでもございません。やはり新しい風を入れるためには違う人事がよかったのではなかろうか、そう思いますので、私はこの人事に反対を、同意案件に反対をいたします。
そして、お願いですけれども、川場村の問題、五千人以上の子どもたちを毎年毎年、世田谷区と教育委員会が一緒になって連れていってしまう、そういった事態はぜひとも断ち切っていただきたい。堀さんも教育委員になられるわけですから、独立性のある機関です。独立機関です。その中で、今までの経験とは違った形で物をお考えになっていただいて、新しい立場で子どもを守っていただきたい。そのことを申し上げて終わります。
○畠山晋一 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。
これで意見を終わります。
これより採決に入ります。採決は起立によって行います。
お諮りいたします。
本件を同意と決定することに賛成の方の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○畠山晋一 議長 起立多数と認めます。よって同意第五号は同意と決定いたしました。
ただいまの同意二件に伴い、新旧教育委員から挨拶があります。
◎中野 旧教育委員 教育委員の任期満了に伴いまして、一言ご挨拶をさせていただきます。
四年間、本当にありがとうございました。教育委員会の形骸化ということが叫ばれて久しいわけですが、四年間を振り返ってみますと、個人の感想の域を出ないかもしれませんが、定例会におきましては非常に多くの問題に真摯に取り組んで、活発に議論ができたというふうに認識しております。
また、一般の区民の方にも足しげく定例会に通っていただいて傍聴していただいた方が、少数ではございますがおりまして、非常に身の引き締まる思いで職務を遂行してきたというふうに思っております。
区議会議員の皆様におかれましても、お忙しいこととは思いますが、もしお時間がございましたら、ぜひ教育委員会の定例会のほうにも足をお運びいただけるとありがたいというふうに思っております。私の最後のお願いでございます。
また、これまで世田谷区教育委員会が取り組んできました地域運営学校や世田谷九年教育、そして教科「日本語」といったことをこれからもご支援いただきまして、世田谷の教育にご尽力いただければ幸いでございます。
私も、これからは一区民に戻りますが、教育委員会の教育行政を応援できるような立場になればうれしいなというふうに思っております。どうもありがとうございました。(拍手)
◎若井田 旧教育委員 私は都立高校の数学科の教員でございましたので、今からもう二十二年前になりますが、東京都教育委員会に入りましてからも都立高校担当として、都の教育庁に約十年間勤務しておりました。その中で、たった二年間でしたが、世田谷区の教育委員会の当時指導室に派遣されました。そのときのご縁で、当時の教育長の津吹教育長、中村教育次長から教育指導課長として戻ってこいとお招きを受けまして、平成十三年度に着任いたしました。そして三年がたちまして、また都に転出するというときに、前熊本区長から教育長へとご推挙いただきまして、議会の皆様にご同意をいただいて就任いたしました。
常日ごろ思っておりましたが、初めに、平成六年に世田谷区に派遣されたわけですが、そのことのご縁で、不思議なご縁で、そしてとてもありがたいご縁で、教育長の任期を務めることができたことをとても感謝しております。
微力ではございましたけれども、八年八カ月職務を遂行できましたのは、議員の皆様の温かいご支援、ご指導、ご鞭撻を初め、多くの方々に支えられて職務を遂行できましたこと、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
今までと同じように、世田谷区の子どもたち、世田谷区の教育の発展、区政の発展を心からお祈りいたしますとともに、皆様方のご健勝を心から祈念申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
◎榊原 新教育委員 榊原博子でございます。ただいま保坂区長のご推挙により、世田谷区教育委員の任命についてご同意いただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
私は、中学校の理科の教員として三十年余り、どの子も伸びるということを信条に務めてまいりました。この世田谷区では、中学校を五校、二十六年間お世話になりましたけれども、その間、生徒はもとより、保護者、あるいは地域の方々からたくさんご支援をいただいたこと、私にとってはそれを現在でも宝物として持っております。
微力ではございますけれども、たくさんのご支援をいただいたご恩に報いるためにも、そして世田谷の子どもたちのためにも、世田谷の教育のさらなる向上と発展に全力を尽くしてまいりたいと思っております。どうぞ皆様には、これからもご支援、ご鞭撻をいただきたくお願い申し上げます。
簡単ではございますが、私の挨拶といたします。本日はありがとうございました。(拍手)
◎堀 新教育委員 本日は、保坂区長のご推挙をいただき、また、議会の皆様のご同意、残念ながら全員の皆さんではなかったような気がしますが、それもご意見として心に深く受けとめさせていただきました。ありがとうございます。
もとより微力でございますが、三十八年間の行政経験を生かし、世田谷の子どもたちのために、また、世田谷の教育の発展のために全力を尽くしてまいります。今後ともご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
本日はありがとうございました。(拍手)
○畠山晋一 議長 以上で挨拶は終わりました。