平成26年度予算編成に対する意見・要望(その3) |
脱原発こそ時代を拓く みどりの先進国を世田谷から
放射能から区民を守り、大規模再開発を見直せ。
住区協議会を創設し、区政と地域に本物の民主主義を!
「緑の党Greens Japan世田谷」 区議会議員 木下泰之
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【その2より続く】
2、基本構想問題について
<主権在民を忘れてしまった基本構想には反対>
世田谷区の憲法ともいうべき「基本構想の策定」について、本年9月から10月にかけての第3回定例議会で、緑の党グリーンズジャパン世田谷は反対した。
反対の一番の理由は、この基本構想の中に区を主語として「町会・自治会やNPOの活動にも加わるなど、地域の課題に主体的に向き合う区民が一人でも多くなるよう努力します。」と書き込まれていることにあった。
「町会・自治会やNPOの活動にも加わる」ということが「地域の課題に主体的に向き合う区民」と断定していることは主権者たる区民に対する越権行為と言わざるを得ない。
地域の課題に主体的に向き合うことが、町会に加わるというようなことではなく、政策形成過程の情報をつぶさに観察し、区長や区議会が気づかないことについて政策提言をし、あるいは、区の不正や怠慢を告発したり訴訟を起こしたりすることであってはなぜいけないのか、ということをあえて問題提起しておきたい。
今回の基本構想を読んでいて何よりも思うことは、区民主権はどこに行ったのかということだ。
大場区長時代の1978年の基本構想では「区民参加とは、区民が主権者としての自覚に立ち、権利と責任をもって区政に参画することを意味します」として区民主権が高らかに謳われ、区民参加の前提として政策形成過程の情報開示が具体的に語られ、区政を身近な地方政府と位置づけていた。
1994年の基本構想も基本的にはこれを継承している。実際には情報公開も市民参加も不十分ではあったが、建前は生きてきたのであり、その意味で現基本構想は役に立ってきた。
民主主義とは、真理を相対化し多数決が必然的に小数を抑圧するシステムであるがゆえに、少数の真理発見者の警告、あるいは少数者の痛みの警告が響き渡ることのできる制度でなければならないと考える。
民主主義は代議制を必要とするが、区民は区長や区議会に全てを委任したわけではない。情報公開・住民参加はそのためにこそあるというべきだ。
京王線連続立体交差事業調査報告書の廃棄問題一つをとっても、情報公開や住民参加は世田谷区において形骸化している。政府与党の「特定秘密保護法」制定やNSC法制定の動きは国民主権と相いれず、反動立法として拒否すべきものだが、もし、保坂区長にこれに対抗しようという意思があるとするならば、まずは、自らの行政情報への対応を改めることだ。
本来世田谷区が持たなければならない資料を持とうとしない。上級自治体の不当な資料廃棄や秘匿を見過ごしにする。庁議の議事録さえ取らない。この事を放置する限り、保坂区長自身が重要情報を隠すことに手を貸している権力者として断罪されるべき存在であることを忘れてはならない。
<現状を放置しての町会加入促進条例制定は民主主義を破壊する>
ところで、町会・自治会が区の基本文書に地域を担う主体として登場するのは熊本区政下の2005年の基本計画からであり、基本構想案に組み入れられたのは今回が初めてだ。
町会は町内会ともいわれているが、ウィキペディアによれば、元々は日中戦争の頃から日本各地で組織され始め、太平洋戦争の戦時下に大政翼賛会の最末端組織となり、戦時下にあっては内部に隣組があったわけであり、戦後GHQが解散命令を下したこともあったことを忘れてはならない。
現在の町会が新しい要素を付け加えていようとも、なによりも行政権力機構や特定政党への追従姿勢など、多くの町会がその誕生の痕跡を払しょくしているわけではない。
ましてや、来年の区議会第一定例会の提出案件として保坂区長が「町会・自治会参加促進条例素案」を示したとあっては、これに反対せざるをえない。
第3回定例議会での多くの会派からの疑問は、条例素案の中に、町会・自治会運営に関して「公平・公正・民主・独立」の担保を求めていないことに向けられていた。現状の町会は戦前の家族制度の名残も反映して世帯主加盟であり個人加盟とはなっていない。したがって世田谷区も町会に関する統計を世帯単位でしかとっていないありさまである。さらには役員は選挙されるわけでもなく、会運営も寡頭制になっているところが多い。世田谷区の町会・自治会196の内、自治法上の登録法人組織となっているところもたった21と少ない。しかもこのような問題点を抱えながらも、町会・自治会の実態把握さえしようとせずに、条例制定に突き進もうとしている姿勢は異常というほかはない。区民主権を行政主権に積極的に置き換えてしまうことに与するような条例制定は行うべきではない。
<住区協議会創設で地域に民主主義を>
地域コミュティは大事ではあるが、民主主義の基本を欠いた町会の多数派(中には民主主義的運営に努力されている町会・自治会もあるが極少数である)の現状を放置したまま地域コミュ二ティの中核とすることは、戦後憲法秩序下での民主主義を葬り去ることにつながる。現行憲法の民主主義に見合った地域民主主義を確立するためには小学校通学区規模毎に「住区協議会」を設けるなどして旧弊にとらわれない地域コミュ二ティでの新しい民主主義の制度の確立が必要なのであり、行政に使い勝手が良いからといって、旧来の町会を「御用」として温存することは間違っている。拙速に町会加入促進条例に進むのではなく地域コミュティの在り方につき、現状の問題点を十分に調査したうえで、全区民の地域からの議論に付すことが必要である。
都市整備に限ったことではあるが、世田谷区は街づくり条例に「街づくり協議会」制度を持ったことがあった。ことがあったとしたのは、条例改正で、条例制定時の「街づくり協議会」は葬り去られてしまったからである。当初の制度設計は、「街づくり協議会」は街づくり問題が該当する地域全域の個人からの参加を呼びかけ、決定事項を決めるにあたっては全域に知らしめ、総会を開いて決めるという制度を有していた。しかも「街づくり協議会」の決定に対し区長は尊重義務を持っていたのである。ところが、条例「改正」で、尊重義務はとり払われたうえで一般市民団体と変わらぬ位置に引き下げられてしまった。
もっとも、制度発足当初から、この「街づくり協議会」をつくる際には地域の町会や商店街の役員が集められて準備委員会が設けられるという手法が多くの場合とられていた。これは行政主導の証であったが、地域諸個人の総会への全員加盟の権利を保証した制度にあっては、行政の意図しない人選や結論が導き出されることも多々あったわけである。そういった事例に接したとき、区はこれを認めないという挙にでたり、全員加盟を保証しない「街づくり懇談会」を組織したりしてきたのである。この事態は市民運動に参加している多くの区民から批判されるところとなり、その行政側にとっての桎梏ゆえに条例は「改正」され、街づくりを協議決定していく協議体は、この条例「改正」により、本質的には解体されてしまったのである。
こうした事態に至った背景には、区民に対する公平性と透明性を担保するという民主主義の原則を区が全く尊重せず、区の施策についての意見を徴集する際にも、区からの補助金に依存する諸団体の意見を優先的に取り上げるといった手法によって、地域民主主義の芽を刈り取り続けてきた歴史があるということを忘れてはならない。
<都市構造の構想なき基本構想>
今回の「基本構想」の致命的欠陥をもう一つ指摘しておく。基本構想改訂に伴い、改訂することになる条例が「街づくり条例」しかなかったことをよく考えておくべきだ。
基本構想とは一見、区の総合的文書のように見えるが、法的に連動する制度領域は都市計画ということになる。自治法に基本構想が義務づけられた1969年は新憲法下の初めての都市計画新法が制定された年でもあった。基本構想による計画行政は都市計画法制定とともにあった。言い換えれば、「基本構想」なる制度は、多くの地域で、その後の土建国家日本の下支えともなってきた。
そう考えると、基本構想に関しては、都市計画に関する記述こそ重要と見なければならない。
大場区長が区長公選制で当選し最初に作った1978年の世田谷区の基本構想は「かつて豊富であった緑は、無秩序な宅地化の進行により急速に失われつつある。」との認識のもと「区民の間に、残された自然を保全し、さらに積極的に回復していこうとする機運が高まっている。区政は、これらの動きと緊密に連系して、自然環境の保全・回復・創設をはかるという重要な課題を担っている。」としていた。
この基本構想の考え方は翌年1979年の基本計画に反映し「現状の環境水準を維持することを前提とした場合、土地利用等の条件を考慮しての本区の人口収容の限界は、約81~90万人程度である。これを超える人口が居住することになれば、本区の環境水準は低下せざるを得ない。こうしたことを考慮すれば、区としてできる限りの人口抑制策を講ずる必要がある」という政策に結実している。
日本全体では人口が縮小傾向であるにかかわらず、すでに区内88万人の人口を抱えるに至り、さらには90万人を優に超えようという時代を迎えた今こそ、世田谷区内のこれ以上の高層高密度化を抑える必要がある。相関関係にある、みどり33の実施計画は必須のものとしなければならない。そうであればこそ、人口抑制策やみどり33の確実な実現目標については基本構想に書き込むべきであるが、今回の基本構想では、そうなってはいないし、そのような問題意識をもって審議会で議論された形跡すらないのは極めて残念なことだといわざるを得ない。
保育児待機問題一つを考えても、人口論の単なる予測観測ではなしに、都市計画と連動した政策的検討こそが必要なはずだ。
みどり33については区政100年つまりは基本構想の到達年次にむけての施策であったはずだ。ところが今回の基本構想には、大規模再開発抑制策については何ら触れることなく、引き続きの道路を含めての都市開発路線を謳っているのであり、区長の選挙公約に背反するといわざるを得ない。
今回の基本構想は、町会加入の記述といい、都市再開発道路推進への配慮といい、区長は大会派である自民党にずいぶん気を使ったはずなのに、その自民党が反対に回るという事態となった。その大会派と私とは同床異夢ということになる。
3、二股膏薬は止めよ
――2013年11月12日の「政治資金パーティー」について
<政治資金集めパーティーに役人動員とは>
さて、2013年9月から10月にかけて開催された第3回定例会では基本構想に連動した町会・自治会加入促進条例の提出の問題点について議論が深められた。また他会派の質疑の中で「保坂展人と世田谷の未来をひらく会」と題された政治資金パーティーについて、その案内が区の幹部職に郵送され出欠の連絡を求められていたことが判明した。
二つの問題は関連しながら、世田谷区の事業執行や予算や決算の在り方に大きな影響を及ぼすため、問題点を指摘しておく。
10月16日の朝日と産経の朝刊は、11月12日に新宿の京王プラザで開催予定の保坂区世田谷区長の政治資金パーティーにつき、パーティー券が世田谷区の幹部職員に郵送され、出欠を求めたことが区議会決算特別委員会で問題にされたことを報道した。
これは他会派の質疑にもとづくものだが、指摘された事実が持つ意味は大きい。役人に現職区長の政治資金集めのパーティーへの参加を求めてよいはずはない。この問題だけでも、主催者は同パーティーを即刻中止すべきだ。
<補助金団体、契約関係団体が呼びかけ人でいいのか>
しかし、11月12日開催予定のこの政治資金パーティーの問題点は、既に指摘されたこの点ばかりにあるわけではない。なによりも情けないのは、パーティーの呼びかけにつき、正式のものとおぼしき世田谷区の援助団体や業界団体・役人・区議会議員向けのものと市民向けのものとの2通りがあり、市民向けのものには正式文書では筆頭に書かれている前熊本区長の名前さえ出てこず、宣伝対象者別に二枚舌の詐術を用いているということなのである。
もし、普通の市民の家庭に業界各種団体のお歴々がずらっと並べられた案内状が届いた場合、このパーティーに参加しようと思う方がどれだけいるだろうか。
正式のものと思われる結婚式への招待状と見まがう角封筒の案内には、以下の呼びかけ人のすべてが書かれてあった。
熊本哲之(前世田谷区長・せたがや文化財団名誉顧問)
桑島俊彦(世田谷区商店街連合会長)、
大場信秀(東京商工連世田谷地区会長)
井上治三郎(世田谷工業振興協会会長)
宇田川国一(世田谷区町会総連合会会長)
松原宏武(東京中央農業協同組合代表理事組合長)
飯田勝弘(世田谷区目黒農業協同組合経営役員会会長)
古畑正(世田谷区医師会会長)
武田忠浩(玉川医師会会長)
中野幹夫(東京都世田谷歯科医師会会長)
富塚高利(東京都玉川歯科医師会)
小林哲男(世田谷薬剤師会会長)
宮澤一成(玉川砧薬剤師会会長)
渡瀬靖夫(世田谷にみどりいっぱいの会)
侭田平(世田谷区建設団体防災協議会)
この後にテレビでも著名な有名人が並ぶ。
菅原文太
岡本厚(友人・岩波書店代表取締役)
香山リカ(精神科医)
松尾貴史(俳優)
松任谷正隆(音楽プロデューサー)
湯川れいこ(作詞家・音楽評論家)
業界団体、職能団体、地縁団体、商店街、農協、医師会、歯科医師会と大変な組織だ。
並べられた多くの団体が区からの数々の補助事業を受けているのみならず、まさに今回の議会で議論の的になった町会加入促進問題では当事者となる存在だということになる。
ちなみに、町会加入促進条例は複数会派の反対や慎重論にもかかわらず、保坂区長がこれを実施しようとしていることも見過ごしてはならない事態だ。世帯主加盟が大半で個々人の独立を前提とした民主主義の確立さえ保証していない町会加入促進を条例化することは憲法違反といわれても仕方がない。
ところで、政治資金規正法によると、
政治資金パーティーは、原則として政治団体によって開催されるようにしなければならないとされている。政治団体が開催した場合には、その収支等については当該政治団体の収支報告書の中で報告する。
政治団体以外の者が特定パーティー(政治資金パーティーのうち、当該政治資金パーティーの対価に係る収入の金額が1,000万円以上であるもの)になると見込まれる政治資金パーティーを開催する場合には、当該政治団体以外の者は、当該政治資金パーティーについては、開催しようとする時から政治団体とみなされ、届出義務、会計帳簿への記帳義務、収支報告書の提出義務が課されるとのことだ。
あれだけの各種団体の長を呼びかけ人に抱えたパーティーの収入が1,000万円以上になる可能性は否定できない。朝日新聞報道では保坂区長の後援会が区幹部に案内を配ったことになっているが、「未来をひらく会」の呼称が耳慣れぬものであったし、区長も議会答弁で会の存在について、他人事のように言っていたので2013年10月17日に都選管に問い合わせてみたところ、「保坂展人と世田谷の未来をひらく会」は政治団体として登録されていないことが判明した。同会が配布した案内には、「この催しは政治資金規正法第8条の2に規定する政治パーティーです。」と書いてあるが、代表者や事務局の名前はなく、呼びかけ人が並べられているだけだ。
政治団体登録なしに、また、代表者も事務責任者も明示せずにこの会を主催する以上、筆頭の前熊本世田谷区長以下の呼びかけ人全員に責任が及ぶことは十分予想されることであり、この実務を司った者の企画の杜撰さが透けて見えるといわなければならない。連絡先は松原の保坂展人事務所内となっているが、一体、この会の責任をだれが取れるというのか、聞かせてもらいたいものだ。
<右左の顔を使い分ける二つの案内>
ところが、これと違った市民向け案内が存在していたからさらに驚きだ。この案内は横長の定型封筒で、保坂区長自身の手紙とともに、郵送されているが、先に紹介した核種団体代表のお歴々については記載されていない。
市民向けの案内状には、呼びかけ人の名前は菅原文太さんを筆頭に有名文化人のみが並べられ、お歴々については団体名もその長の記載もなく、末尾に「区内団体の代表の方々」とのみ書かれている。
市民向けの呼び掛け文は確かにスマートだ。
「独自のスタイルで特定の企業・団体に依存することなく、全国の志にささえられてひた走ったこの間でした」「また同時に日本社会が陥っている閉塞状況を打破し、民主主義をダイナミックに復権させる役割をになって、これからも政治家保坂のぶとさんの発言と行動に期待したいと考えています」とある。この文章を読ませる人々には熊本前区長をはじめ自民党の支持者とおぼしき業界団体会長や町会連合会長の名前は邪魔なのだろう。
もっとも信頼を置かなければならない市民に向けて「区内団体の代表の方々」としか示さないこの手法にこそ保坂展人区政の形骸化した「情報公開と市民参加」が象徴されており、民主主義をへタレさせる。
パーティー券による政治資金獲得の呼びかけ人を前区長肝いりで区内業界団体や町会連合会にやらせておいて、「企業・団体に依存することなく」もないだろうし、同封の手紙にある「地域から出来る事参加と民主主義のバージョンアップを目指して日々燃えています」も「質の濃い政策を、しがらみなく市民の立場から元気よく実現したい」もないだろう。
<オール与党の癒着体質は民主主義を圧殺する>
世田谷区政は2代前の大場区政の2期目以降はいわゆるオール与党体制に堕し、議会での闊達な論争の機会や本来区民が有してきた直接制も含む民主主義の真のダイナミズムを圧殺してきた。補助金を受けることを見返りに「お上」に協力する地縁団体や業界団体と行政の癒着を断ち切ることを経ずして、自治も民主もあり得ない。
【その4へ続く】