人権擁護委員推薦の諮問に対する質疑と討論 |
人権擁護委員については、お隣の杉並区では氏名とともに委員の居住地域や連絡先が積極的に広報されていますが、世田谷区では人権週間の時期に法定事項の氏名のみ広報するだけで、居住地域や連絡先は広報されていません。
人権の守り手を使命として選ばれる人権擁護委員が何ゆえに積極広報されないという事態は一体何なのか・・・、今回議案資料に「取り扱い注意」なる文言が提出されるにいたり、本会議での質疑・討論でこの秘匿体質の有り様を区民に問うこととしました。なお、議題となった武田邦信氏についての権擁護委員推薦諮問については賛成いたしました。
人権擁護委員推薦の諮問に対する質疑と討論
<人権擁護委員推薦の諮問の提案と質疑>
議長 次に日程第20を上程致します。
日程第20、諮問第2号、人権擁護委員候補者推薦の諮問
議長 本件に関し、提案理由の説明を求めます。
保坂区長 諮問第2号、人権擁護委員候補者推薦の諮問についてご説明致します。
本件は平成26年12月31日をもって任期満了となります委員一名の後任候補者を法務大臣に対し推薦する必要があるのでご提案申し上げた次第です。
候補者につきましては法の趣旨に則り世田谷区保護司会からご推薦頂いたものであります。
慎重に検討をいたしました結果、推薦することを適当と認めまして人権擁護委員法第6条第3項の規定に基づいてお諮りするものであります。
よろしくご審議賜りますよう、お願い申し上げます。
議長 以上で提案理由の説明は終わりました。
これより提案理由の説明に対する質疑に入ります。
なお、質疑についての発言時間は議事の都合により答弁を含めて10分以内といたします。
発言通告に基づいて発言を許します。24番木下泰之議員
木下議員 いくつか質問をさせていただきます。人権擁護委員について、世田谷区は20名の委員の氏名のみ公表するものの、住所も連絡先も肩書きとか経歴も公表しておらず、区民が区に問い合わせても教えてさえくれない。相談日にどの委員が出るのかさえ伏せられています。これはなぜかお聞きしたいと思います。
区議会での議決では人権擁護委員推薦の諮問については住所氏名や経歴が公表された上で、判断しています。公表されるべき情報であると考えますが、理事者側はこれまで同資料やメンバー表につき、「取り扱い注意」なる注意書きをして区議会に提出してまいりましたが、区議会への不当な干渉とは考えないのか。なぜ、このようなことをしたのか、見解を明らかにしていただきたいと思います。
理事者側は9月16日の議運の席上、住所や連絡先を公表しないのは、法務局の制度設計だとしたので、その根拠文書を求めたが、その根拠文書さえ示してはいただけませんでした。後に、根拠文書のようなものとして昭和59年8月31日付の法務省訓令第3号、平成18年9月22日最終改正の文書を持ってきましたが、第5条には「人権相談は、常設相談所または特設相談所において取り扱うものとする。ただし、人権擁護委員がその自宅において取り扱うことを妨げない」とあります。この文書は人権擁護委員の住所や連絡先を非公開にする根拠にならないばかりか、公表を前提にしていなければ、ありえないという意味で真逆の調令であります。したがって、非公開とする制度設計はなかったととらえるべきであるが見解を示していただきたいと思います。
世田谷区は以前は人権擁護委員について住所や連絡先などを公開していたとしておりますが、以前はどのように公開していたのか、いつの時点から非公開になったのか明らかにしていただきたいと思います。また何を根拠に、いかなる決定に基づいて非公開としたのか事実経過を明らかにしていただきたいです。
人権擁護委員法第2条は「人権擁護委員は、国民の基本的人権が侵犯されることのないように監視し、若し、これが侵犯された場合には、その救済のため、すみやかに適切な処置を採るとともに、常に自由人権思想の普及高揚に努めることをもってその使命とする。」とその使命を定め、第6条7項では「法務大臣は、人権擁護委員を委嘱したときは、当該人権擁護委員の氏名と職務をその関係住民に周知せしめるよう、適切な措置を採らなければならない。」8項では「市町村長は、法務大臣から求められたときは、前項の措置に協力しなければならない。」また11条では具体的職務を規定してあります。また、同委員が委員の立場を利用してふさわしくない行為をした場合には法務大臣は解嘱できる」とされています。
法の趣旨からいって、人権委員の氏名・連絡先や経歴は積極公開し、もっと区民が人権相談をしやすくするべきではないか。また、ふさわしい仕事をしているかどうか、衆目のもとにあかなければならない存在であると考えます。このことは私たち区議会議員のありようを考えてみれば明らかではないでしょうか。杉並区をはじめ、いくつかの区では名前や居住地域と連絡先を明記し、区民相談をしやすくしておりますが、世田谷区はもっと積極的に人権擁護委員の住所・連絡先、肩書・経歴等を公表していくべきだと考えます。今後の対応をお伺いします。
世田谷区子ども条例での「子どもの人権擁護委員」と人権擁護委員の連携はあるのか、子どもの人権擁護委員については、氏名の公表・住所・連絡先の公表はあるのか。また、民生委員や行政相談員、保護司については、氏名、住所、経歴、連絡先の取り扱いはどうなっているのか、判断基準は何か、お伺いしたいと思います。
以上です。
斎藤生活文化部長 人権擁護委員についてご質問いただきました。順次お答えいたします。まず「20名の委員の名前は公表しているが、住所、連絡先も肩書きとか経歴も公表しておらず、区民からの問い合わせの対応や、相談日の該当委員を伏せている」とのご指摘についてでございます。人権擁護委員は人権問題に関する相談に応じ、国民に保証されている基本的人権を守ると共に人権意識を高めることを目的としており、全国に配置され、職務に対しては法務大臣の指揮監督を受けております。
相談体勢といたしましては、法務局、地方法務局に設置されております常設相談所と各区市町村に設置されている特設相談所において相談に応じております。世田谷区の場合は特設相談を各総合所で行っております。区民の方からのお問い合わせにつきましては各総合所の特設相談をご紹介すると共に急を要する場合は常設相談所の電話、連絡先をご案内しております。また区民の方からの相談日の担当委員のお問い合わせにつきましては、例えば弁護士の方であるとか、保護司の方であるとか、担当されている方のお職についてお伝えし、相談者の立ち場に立ったご案内をしているところでございます。
次に区議会において提出しております人権擁護委員名簿に「取り扱い注意」の表記をしている件についてのお尋ねでございます。人権擁護委員は市町村長が推薦し、法務大臣が委嘱することになっております。推薦をする際、区市町村議会の意見を聞くこととなっており、議会での判断材料として人権擁護委員の名簿、および個人の経歴を添付しております。当諮問に関わる推薦者以外の氏名を掲載していたことから人権擁護委員の名簿に「取り扱い注意」の表示をさせていただきました。今後は区民生活常任委員会において、人権擁護委員の生年月日の記載を除き、「取り扱い注意」の表示を削除したうえでご報告申し上げます。
次に法務局の文書では委員の名前を非公開とする明らかな根拠はないものととらえているが、区はどう認識しているか、とのお尋ねでございます。
昭和59年8月31日、法務省訓令第3号、平成18年9月22日、最終改正の人権相談取り扱い規定第5条の解釈について、法務局に問合せをしましたところ、「人権擁護委員は国の制度であり、現在の常設相談所または特設相談所で行うことを基本にしておりまして、人権擁護委員がその自宅で相談することを強制するものではなく、個人情報を充分考慮のうえ、地域の実情に応じて判断していただきたい」という趣旨の説明を受けております。
地域によって取り扱いが異なるところもございますが、区といたしましては、委員の連絡先を非公開させていただいております。
次に人権擁護委員の連絡先を非公開としてきた根拠、および経緯についてでございます。
東京法務局によりますと、「10年ほど前までは連絡先を公表していた」とのことですが、その後「人権擁護委員に対する執拗なつきまとい自宅への居座り、ストーカー等が問題となり、人権擁護委員の個人情報保護、安全の確保の観点から平成16年頃から人権擁護委員の連絡先の公表は差し控えて差し支えない」となった旨の話をうかがっております。
次に「人権擁護委員の連絡先を過去のように公表し、もっと区民が人権相談をしやすくすべきである」とのご意見、今後の対応についてでございます。
これまでも世田谷区人権擁護委員会、東京人権擁護委員協議会第三部会等の情報公開におきましても、相談の場面で身の危険を感じるなど、安全の確保についてご意見が提起されております。同委員会の懇談会におきましても、危険を回避する術やマニュアル等の提供を求められ、現在でも対応している状況でございます。こうした理由から区といたしましては、総合支所の特設相談やお急ぎの場合などは東京法務局の常設相談、また気軽に相談できる東京法務局のみんなの人権110番といった電話のホットライン、ないし24時間インターネット相談等、連絡先をご案内し、相談者の利便性を充実させております。今後も同様の対応をしてまいりたいと存じます。なにとぞご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。
最後に子どもの人権擁護委員と人権擁護委員の連携、子どもの人権擁護委員、民生委員や行政相談員、保護司の連絡先等の公表とその判断基準についてでございます。
子どもの人権擁護委員と人権擁護委員の連携に関しましては、相談内容と個別具体的な事例についての共有はございませんが、相談内容の傾向や件数、一般的な解決の手法等についての情報交換を行っているとのことでございます。
お尋ねの各相談委員の取り扱いについてでございます。まず子どもの人権相談委員は、子ども条例による第三者機関であり、「せたホッとレター」という情報紙に委員の氏名、肩書きを載せておりますが、個人の連絡先については公表しておりません。
次に民生児童委員は民生委員法により厚生労働大臣から委嘱され、公表する内容につきましては、職務の内容から世田谷区民生児童委員協議会で検討し、新規に委嘱された際に区報で氏名、担当区域、電話番号を掲載しております。行政相談員は行政相談法により総務大臣から委嘱され、公表については行政相談員の総意により決定し、年に一回、区報に地域、氏名、電話番号を掲載しております。
また保護司に関しましては保護司法により法務大臣から委嘱され、その業務の特殊性から氏名等の公表はしておりませんが、お問い合わせの際は、必要に応じ、保護司会に、保護司会局の番号をご案内しております。同判断基準につきましては、所管する各関係省庁、ないし関係組織の判断によるものとうかがっております。
以上でございます。
木下議員 法務局に電話問合せと言っておりましたが文書はあるんですか? それだけお聞きしておきます。
斎藤生活文化部長 文書につきましては先ほど(チャイム)
場内失笑あり
<人権擁護委員推薦の諮問への討論と採決>
議長 以上で木下泰之議員の質疑は終わりました。
これで提案理由の説明に対する質疑を終わります。
ここで委員会付託の省略についてお諮り致します。
本件は会議規則第38条第3項の規定により委員会付託を省略致したいと思います。
これにご異義ございませんか。
(異議なしの声有り)
御異議なしと認めます。よって本件は委員会付託を省略することに決定いたしました。
これより意見に入ります。なお意見についての発言時間は議事の都合により10分以内といたします。
発言通告に基づき発言を許します。24番木下泰之議員
木下議員 人権擁護委員推薦への賛成意見です。諮問第2号人権擁護委員候補者推薦の諮問につき賛成の立場から意見を申し上げます。
人事案件ではありますが、この事案は人権擁護委員法で人権擁護委員を自治体の首長が自治体有権者の中から推薦するに当たり区議会に同意を求めてきた案件であります。
今回、さきほど、この案件につき質疑を行わせていただきました。その結果を踏まえて、意見を申し述べたいと思います。
この案件が9月6日の議会運営委員会に、区長から審議予定案件として提出された際に、選出された人権擁護委員の区の広報姿勢を出席していた理事者に問いただしました。というのは、私が7月にある区民から人権侵害事案の相談を受けた際に、区の担当を通じて人権擁護委員に連絡を取りたいと申し出たところ、人権擁護委員の連絡先や住所は教えられない。人権相談なら相談日があるのでその際に相談に行ってもらいたいとの回答が帰ってきたのであります。そこで、直近の相談日には人権擁護委員のどなたがいらっしゃるのですかと尋ねても、担当者からは教えてもらえないとの回答が帰ってきたという経験をしていたからです。
議案には当然のことながら、人権擁護委員の氏名と住所が記されており、履歴が添付されています。そうである以上、これらの情報はなんらの秘密でもないはずであります。また、議運では議案に添付された人権擁護委員会のメンバー表につき「取り扱い注意」の文言が印字されていることを私は問題にしました。議案として提出される文書の資料が「取り扱い注意」であってよいわけはありません。この取り扱いについては、印字を消して出しなおすべしとの私の要求は通りませんでしたが、今後、同様事案の場合、提出の際には理事者側は「取り扱い注意」は消すとの結論を得ました。
しかしながら、残された問題があります。住所氏名を明記し、肩書きや経歴も資料として示されて、推薦をおこなう人権擁護委員につき、区は何ゆえに、住所や連絡先、さらには肩書きや経歴を広報せず、人権擁護委員が輪番で行っている区の人権相談日に誰が出席するのかさえ、秘匿するのであろうかということであります。
議事資料について区議に提出する人権擁護委員の現職メンバー表でさえ、「取り扱い注意」と書いてしまうほどに、区側は人権擁護委員の基本情報につき、いかなる理由で秘匿するのかと問いただしました。
議会運営委員会の席で理事者から帰ってきた答えは、以前は世田谷区でも居住地域や連絡先は公開していたということで先ほど平成16年のころから秘匿したというふうに言われていますけれども、この措置については法務局の制度設計に沿って行っているとの答弁でした。
23区中、杉並区や幾つかの区では居住地区や連絡先を公開していることから、この説明は不可解に思い、法務局の制度設計を規定する文書を議運に提出させるべきだと議会運営委員会の委員長に迫りましたが、委員長から結局は発言を封ぜられ有耶無耶にされてしまいました。
もし、議会運営委員会がきちんと理事者側に根拠資料を求め、提出させ、問題の所在を明らかにする作業をしていたならば、先の議案質疑や、いま、行っている意見表明も必要がなかったに違いありません。
さて、先ほどの質疑でわかったことは、人権擁護委員の住所や連絡先肩書き経歴といった議事事項でのある基本事項を伏せろとした法務局の制度設計なるものは存在しないという風に私は理解しました。法務局の制度設計なるものの根拠として理事者側が示した昭和59年8月31日法務省訓令題3号の5条は次のように書いてあるのです。
「第5条 人権相談は、常設相談所または特設相談所において取り扱うものとする。ただし、人権擁護委員がその自宅において取り扱うことを妨げない。」
この文書を素直に読めば、自宅において扱うとなれば、人権擁護委員の住所が明らかでなければならないということになるのであって、住所を秘匿する根拠にはまったくならないと言えるのではないでしょうか。
さて、私は、今の時代において人権擁護委員の役割はますます必要になってきていると思います。そうであるがゆえに、選ばれた人権擁護委員がどのような人であるか、またどうすればその方に会うことができるかは明示されていなければならないと思います。公人として広く知られ、任期中の評価も受けられるようにしなければならないと考えます。
人権相談を全うするにはそれなりの覚悟が必要でしょう。危険も伴うかもしれません。しかしながら、その危険を回避する方法は、連絡先を隠したり、目立たなくすることではないと思います。人権相談の場所を工夫したり、複数で相談に当たることの工夫や、それこそ、システムの工夫で乗り切らなければならないのではないでしょうか。
民生・児童委員や行政相談委員については、氏名や地域、電話番号が公開されております。人権擁護委員ついては世田谷区では現在は氏名だけの公表です。これは法定事項ですので、氏名は公開しなければならないわけですけれども、地域や電話番号は即刻にでもやはり公開するべきですし、区議会審議に付している住所や経歴をも積極的に公開すべきと私は考えます。
私たち、区議会議員も公人として自戒しなければならないことがあります。区議においても人権擁護委員と同じく住所用件がありますので住所は区議会広報上、明示されていなければなりません。ところが最近の区議会広報では住所地でなくても、連絡先を書くことで足りることになってしまっているのです。他区において住所要件を欠いて議員資格を失った例もありますので、区議会広報においては住所地の明示を義務づけるべきではないでしょうか。
今回、区長が推薦の諮問を求めている人権擁護委員候補者武田邦信氏はこれまでも人権擁護委員をなさってきた方で保護司も務めておられます。
また、世界5カ国にある「国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の国内委員会」の一つである「特定非営利活動法人国連UNHCR協会理事」にも就任されていますので、難民問題を含め、国際的な人権擁護問題にも造詣が深いと推察されます。
武田邦信氏が人権擁護委員としての職責を充分に果たされることを期待して賛成いたします。
最後に、人権擁護委員法2条(委員の使命)の条文を確認して賛成の意見といたします。
「人権擁護委員は、国民の基本的人権が侵犯されることのないように監視し、若し、これが侵犯された場合には、その救済のため、すみやかに適切な処置を採るとともに、常に自由人権思想の普及高揚に努めることをもつてその使命とする。」
とあるわけでございます。
この使命を全うするためには、やはり住所は公開して、いつでも相談に来れるような状況を作る。そして、また、いつでも迅速に人権侵害があったならば、これに対して対処できる、そういった体制をとるべきであると思います。
身の危険であるとか、プライバシーの問題については、これはその人権擁護委員を守るためのシステムをどのように作っていくか、それこそ、そういった人権擁護委員が不当にプライバシーを犯されたり、あるいは付きまとわれたり、そういったことがあれば、私たち市民社会すべてがそれに対してノーという、そういった体制も作っていかなければならないと思います。
人権擁護委員、あるいは行政相談委員、そういった公的に選ばれた方々、そういった方々が市民社会の中で果たす役割は大きいと思います。そういった方々までも、何かその存在を秘匿していく、そういった社会風潮がありますけれども、是非これを公開することによって、新しい市民社会を形成していく、そのための核となっていただきたい、その思いで私は意見を述べた次第でございます。
ありがとうございました。
議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。これで意見を終わります。これより採決に入ります。お諮り致します。本件を、諮問どおり答申することにご異議ございませんか。
(異議なしの声有り)
ご異議なしと認めます。よって諮問第2号は諮問通り答申することに決しました。