下北沢地区連立事業見直しについての要請並びに質問書 |
残念ながら、年内は忙しいとのことで、区長との面談はかないませんでしたが、住民は12月16日に板垣副区長以下、事業担当部長等に面会し、「下北沢地区連立事業見直しについての要請並びに質問書」を提出しました。
保坂区長誕生の原点にもかかわる問題です。保坂区長の出馬を後押した下北沢住民からの疑問の声に、保坂区長は、自ら面談に応じ、きちんと回答するよう、求めています。
この要請行動には木下も同席しました。
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2014年12月16日
世田谷区長 保坂展人 様
「下北沢地区小田急連立事業環境対策会議」
下北沢地区連立事業見直し
についての要請並びに質問書
世田谷区は今年8月26日に北沢タウンホールで開催した「北沢デザイン会議」では、補助54号線と駅前ロータリーの見直しや、地下化事業地上部に生じてしまった最大4mもの擁壁問題見直しの課題、小田急側の 上部利用計画の具体的プランの提示や電鉄による説明などが求められました。
しかしながら主催者である区は補助54号線や区画街路10号については裁判に任せるとして見直しへの道筋も示さず、また、擁壁問題についても立面計画図さえ手に入れていなかったにもかかわらず、事業がこのように進んでしまったことの説明責任さえ放棄しております。
その後、世田谷区は地下化事業地上部のワークショップと補助54号線および駅前ロータリー(区画街路10号線)のワークショップを別々に参加者を公募して開始しました。区の広報誌である「北沢デザイン通信」1号には、それぞれのワークショップを経たのちの2015年2月28日に2回目の「北沢デザイン会議」をおこない、この会合でデザインコンセプトをまとめ一定の方向性を出す旨を掲載しています。
しかし、これらのワークショップは、造成した地下化事業地上部の具体的利用計画の詳細や周辺再開発計画の全体像も示されぬまま行われていることには、深刻な問題を感じざるを得ません。とりわけ道路のワークショップに至っては都市計画道路自体の見直しは行わないことさえ言明されて実施されています。「北沢デザイン通信」1号ではアンケートも実施していますが、まずは8月26日に突きつけられた都市計画や街づくりの問題点について、真摯に答えることから始めるべきではないでしょうか。
そもそも連続立体交差事業は、都道府県が事業主体となり、税金を使って行う公共事業であります。それゆえ、道路法は、連続立体交差事業の採択前に、事業の全体像についての事業調査を、事業者に義務づけています。本来ならば、将来計画の具体的ビジョンを線増連続立体交差事業の企画立案者であり事業者でもある東京都が、当該自治体である世田谷区を通じて、区民意見の反映を図ったうえで、具体的に提示提案し、ステイクホルダーの意見も聞き、広く議論を巻き起こしたうえで、公平公正に事業の是非を問いながら事業化を図っていくべき筋合いのものであります。
ところが、下北沢周辺の連続立体交差事業においては、構造形式の決定から、上部利用の在り方に至るまで、情報が秘匿されたり操作されたりしてきており、区民や沿線住民からすれば、一体だれが事業の主体で、だれに権限があるのかさえ、明確には分からないようになっているのが実態です。具体的に言えば、区の権限であるのか、東京都や国の権限であるのか、小田急電鉄の権限であるのか、権限の委任関係、さらにはその根拠さえあやふやなままに、説明を受けたり、断片的に意見を求められたり、参加を要請されたり、という事態になっているのが現状であるといえるでしょう。
区の担当者や街づくりに従事するコンサルタントは、区民からの疑問に的確に答えなれなければその勤めを果たすことができないはずなのに、事業計画の立面図さえ持ち合わせていません。さらに事業者が行った基本調査である連続立体交差事業調査報告書でさえ、その位置づけがあやふやなままに対応しようとしています。
保坂区長は、自ら書き下ろした著書「闘う区長」の記述で、上部利用の費用負担についての知識の欠落を露呈したにも関わらず、きちんとした反省の言葉は出しておられません。また、行政側の利用計画があれば、利用権を優先されるとしたいわゆる「建運協定」を十分考慮せずに、小田急電鉄との交渉に臨んだりしており、上部利用計画を立案するといいながら、財政計画すら具体的に語ろうとしていないのであります。区長自らが事業の全体像を把握せず、するつもりもないのであれば、情報公開はおろか、そもそも住民参加が成り立つ筈もありません。
下北沢の補助54号線を含めた連立事業については現在裁判になっていますが、裁判の中では、補助54号線の旧法下での当初の都市計画決定が、旧法の規定にすら違反して決定されたことが問題になっています。昭和39年の鉄道の都市計画決定は、在来線に地下鉄を貼り付けたに過ぎないもので、行政が従来主張してきた複々線決定ではなかったことも問題になっています。世田谷区が東京都の内部団体であった1970年に、佐野区長が世田谷区最初の基本計画「緑と太陽の文化都市をめざして」を策定した際には、下北沢の都市計画については、高架複々線都市計画が下北沢に存在しているかのような図表を公然と掲げていましたが、後に区の担当者は1964年の都市計画が平面決定であったと主張を変えています。
保坂区長と区の担当者は、この計画の大前提にある大きな矛盾を、まずはきちんと整理して見解を提示する必要があるのではないでしょうか。
さて、来年3月末で、件の補助54号線と駅前ロータリー区画街路10号線の事業認可期限が切れます。
保坂区長は、下北沢の連立事業に絡む補助54号線事業と高層再開発に関し、「醜悪なコミュニティ破壊の下北沢『再開発』」を批判したたうえで、選挙戦を戦い、区長に就任しています。今こそ区長選に立候補した時の志に立ち返り、事業を見直すための好機が到来したというべきです。
2011年の選挙戦で語った言葉こそ、現保坂区長誕生の源泉であったことは間違いがありません。それを踏まえたうえで、私たちの要請と質問に真摯に向かい合っていただきたく申し入れます。
文書をもって答えていただくと同時に、面会・懇談を求めるものです。
記
1、 私達は本年7月から開始した「北沢デザイン会議」と、その下で着手したワークショップを通じて下北沢の都市計画や街づくりに対する意見を区民参加で行うものと理解していました。しかし明日12月17日には、上部利用のワークショップも半ばであるにも関わらず、「世田谷区小田急線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)上部利用計画(素案)」の策定についての報告を、区議会都市整備常任委員会に行うと伝えられています。「北沢デザイン会議」やその下の「ワークショップ」の結果が出る前に、こうした手続きに入ることは、善意で会議やワークショップに参加している区民の熱意を、根底的に愚弄する暴挙であると思いますが、見解を明らかにしていただきたい。
2、本年11月29日開催の北沢デザイン会議の上部利用ワークショップの際、8月開催の「第1回北沢デザイン会議」や2つの「ワークショップ」における連立事業や補助54号線事業、再開発事業、上部利用についての基本事項についての質問について、区側からの答弁を欠いたまま進行されてゆくことに、会場からクレームが上がり、主宰責任者の街づくり課長は、別の機会を作って対応すると答弁をしました。いつどのように履行されるのか明らかにしていただきたい。
3、下北沢地区の地下化の小田急線連立事業の北側に生じた最大4mもの擁壁は、南側の地盤が高いために、この地盤から水平に地盤を拡張すれば生じるものですが、さらに、南側の地盤をわざわざ高くしたところもあります。本来は旧来の自然な地盤への鉄道事業地跡地からのアクセスを考えるのが基本であり、近隣との調整もなく勝手に造成したことは近隣の権利の蹂躙です。地下化後の事業地についての調整役を務めるべき世田谷区が、立面図をすら持ち合わせておらず、問題の所在をもつかめなかったのは重大な問題です。
世田谷区は今後は近隣との調整に責任を持ち、造成地の解体も含め見直しに責任を持っていただきたい。
4、世田谷区長は小田急電鉄と協議し、昨年9月に「ゾーニング構想」なるものを決め、同年11月に小田急電鉄社長とともに記者会見を開き公表しました。
しかし連続立体交差事業という公的事業で生まれる上部空間の利用が、このような形で取り仕切られることについては、大きな疑問があります。
上部利用の決定について、国、東京都、世田谷区、鉄道機構、小田急電鉄のそれぞれの権限と権能、周辺住民や区民への説明責任の所在を、法令や建運協定に照らして明らかにした上で、区民に対し分かりやすく丁寧に説明していただきたい。
5、上部利用については、小田急側のプランや駅周辺の建物計画、再開発計画を含め、本来、国の事業認定を受ける以前に、道路法による連続立体交差事業調査の段階でなされるべきものであると思いますが、区はこれについてどのように考えているのか、見解を明らかにしていただきたい。
住民参加や情報開示が区政の基本姿勢であるならば、計画策定が遅れたとしても、少なくとも、都市計画事業の構成要素である以上、計画を固定化する以前に具体的に明らかにした上で、沿線住民や区民からの意見を聞くために説明会を開くべきであると考えるがいかがか、見解を示していただきたい。
6、以前は連立事業により南北分断解消と言っていたのにも関わらず、小田急電鉄は南北の擁壁上に2mもの高さの金網フェンスを作るといいだしています。
せっかく地下化で地上があいたのですから、これを機会に南北の行き来をできるようにするべきですし、金網で囲うこともよいことだとは思えません。そもそも現在は事業者ではない小田急電鉄が、事業半ばでそのあり方を決めてしまうことが可能なのは、どういう権限によるものか理解できません。
金網フェンスの是非は、一体誰がどのように決めていくのか、誰に権限があるのか、当面の住民の交渉先はどこなのか、現在の事業主は東京都あるいは鉄道機構ではないのか、権限あるいは権限委任のプロセスを明らかにしてください。
7、補助54号線と区画街路10号線についての事業認可期限は、事業進捗を欠いたまま、2015年3月に切れます。補助54号線については、下北沢補助54号線と連立事業を巡る訴訟で、行政側は昭和21年4月の都市計画決定につき、当初は戦災復興院が都市計画決定をしていたと主張していました。
この件に関しては、「旧都市計画法*では主務大臣が都市計画決定を行い、内閣の認可を受ける、としているため、主務大臣ではない戦災復興院総裁が都市計画決定をすることはありえない」と住民側が指摘すると、行政側はその記述は「誤記」であり、「内閣総理大臣が都市計画決定した」と訂正しました。
しかし新憲法施行以前に、内閣総理大臣という正式な官職はありません。当然内閣総理大臣が都市計画決定をすることもありえません。そのため決定の証拠を示せと要求しても、示せぬままでいます。
いずれにせよ、旧法下でのかような都市計画決定は、旧法に照らして違法であり、その違法は現都市計画決定にも承継され、違法です。したがって事業認可も違法であるので、事業認可延長申請を断念していただきたい。
*(旧都市計画法)
第三条 都市計画、都市計画事業及毎年度執行スヘキ都市計画事業ハ都市計画審議会ノ議ヲ経テ主務大臣之ヲ決定シ内閣ノ認可ヲ受クヘシ
都市計画、都市計画事業及毎年度執行スベキ都市計画事業ニ付テハ政令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣之ヲ告示シ行政庁ヲシテ関係図書ヲ縦覧ニ供セシムベシ
8、 補助26号線も補助54号線と同様に昭和21年の同時期の都市計画決定であり同様に違法であるので、東京都は事業を一旦中止し、都市計画自体を見直すべきです。
事業地の当該自治体として関係する世田谷区は、このことを事業者である東京都に申し入れていただきたい。
9、下北沢の小田急線連続立体交差事業は補助54号線と補助26号線の2本の都市計画道路を整備することが要件となってきた事業であり、2つの都市計画道路が違法である以上、連立事業自体も抜本的に見直されるべきであり、しかるべく手続きを取るよう、当該自治体である世田谷区は東京都や国に申し入れていただきたい。
10、現在進められている小田急線の線増連続立体交差事業について、東京都や国は昭和39年(1964年)の複々線決定の変更決定としていますが、そもそも昭和39年(1964年)の決定は、地下鉄9号線を小田急線の在来線に貼り付けた決定に過ぎないことが明らかになっています。つまり計画地なき都市計画であったにかかわらず、あたかも幅と面積をもった計画であるかのように欺罔し、「複々線計画地」が存在しているとして駅前マーケットをはじめ沿線住民の権利を踏みにじってきたのです。その認識と反省をもって、沿線計画や駅前広場計画の抜本見直しを行っていただきたい。
11、下北沢地域の再開発の見直しは、小田急線と井の頭線が交差し鉄道交通の便もよく、幹線道路に囲まれた下北沢に、あえて幹線道路を通す必要はないとの認識からなされるべきです。連立事業を基礎付ける幹線道路が決定された経緯自体に違法があった以上、幹線都市計画道路は凍結し、既に買収してしまった土地の利用方法も含め、歩いて楽しめる路地の街として下北沢が培ってきた魅力を最大限引き出すための抜本見直しに進んでいただきたい。
12、熊本区政下で補助54号線の事業認可と同時に行われた高層化誘導の下北沢駅周辺地区計画都市計画決定にあたっては、都市計画案の意見書募集に当たって、世田谷区職員の意図的誘導があったことが明るみに出、その混乱の責任をとって当時の都市計画審議会長が辞任するに至っています。下北沢の都市計画を見直すにあたっては地区計画の見直しも再度着手していただきたい。
13、上部利用について、小田急電鉄は商業施設のみならず、住宅整備を計画していると伝えられていますが、どのような計画であるのか明らかにしてください。商業利用も問題ではあるが、とりわけ住宅整備となれば、分譲にせよ賃貸にせよ、私的居住利用空間と公的空間との軋轢が生じやすくなるため、極めて大きな問題となりますが、このような利用形態を公共側は、どういう根拠により是認しているのか明らかにしてください。
14、上部利用について小田急電鉄の示している利用料金規定や譲渡条件を明らかにしてください。そしてその利用料金体系が、連立事業の事業非負担との見合いで妥当なものであるかを透明性を確保した形で検証してください。
15、小田急電鉄は上部利用計画として賃貸住宅や商業施設を計画していると伝えられていますが、そのような営利目的のための造成が可能である根拠を明らかにしてください。また賃貸住宅や商業施設について、その便益はどのように計算されているのか明らかにしてください。
16、小田急電鉄は連立事業に於いて、794億円中50億円と6.3%しか負担しておらず、50億円を便益としているが、これは、高架連立事業の際の15%と比較しても、不当に低いと思われるが、その積算内訳を明らかにしてください。
鉄道上部ということでは、すでに区画街路10号線事業に世田谷区は70億円をも使うことにしています。その際、小田急電鉄からの土地買収にはいくら使うことになるのか、明らかにしてください。
さらに東北沢駅や世田谷代田駅における駅前広場整備に関し、鉄道上部を区が買収することになりますが、その費用がいくらになるのかも明らかにしてください。
17、北沢地域はただでさえ、世田谷区内全体の中で緑が不足しています。地下鉄事業地上部利用にあたっては、極力公共的な緑地として整備するべきです。上部利用については建運協定により、自治体側が示した場合は、公共利用計画が優先される仕組みになっています。世田谷区は公共利用の計画をどのように考えているのか、そのための財政負担をどのように考えているのか明らかにしてください。
18、小田急線の在来線はすでに地下にもぐり、緩行線の工事が現在進捗中ですが、鉄道運行の関係での夜間工事は、すでにその必要はなくなっていると思われます。沿線住民の安眠と健康を守るために、工事については夜間を避け、さらに極力工事騒音を防止するよう、事業者に申し入れていただきたい。
19、保坂展人区長はさる11月開催の第4回定例議会で、下記に例示した言辞につき、木下泰之区議から確認を求められたところ、おおむねこれを認めたが、就任の際に前区政との継続を重視し、95パーセントは継続し5%につき大胆に改革をしていくと述べたと答えています。これは公約を撤回したということかどうかを明らかにしていただきたい。選挙戦時の大規模再開発の見直し公約の大きな柱でもあり、「石原都政と小泉改革の醜悪なコミュニティ破壊」とされていた下北沢の連立事業、道路事業、高層再開発事業についての認識をどのように変えたのか明らかにしていただきたい。また、区長は何を継続し何を改革するとしたのか具体的に明らかにしていただきたい。
【2010年5月19日 Twitter】
「下北沢「再開発」は、石原都政と小泉改革の醜悪なコミュニティ破壊だと思います。下北沢を巨大道路で分断。高層ビルを建てるための条件がそろうが、実は道路はわずかな距離だけ。短い帯のような幅広い道路は、高層ビル建設を可能にする仕掛け。こんな計画に道路特定財源が投入。スズナリも道路予定地。」(2010-05-19 11:32)
【2011年4月16日 区長選告示日前日の下北沢での鼎談(インターネットに公開)】
「自治体の首長、いわゆる区長ということを比べて考えたときに、国会議員にはなかなかできないことを多数、守備範囲にしていますよね。それは多くは、ある種の、以前の区政から継承してくる話かも知れない。だけど、実際にその、たとえば、この下北沢では26メートル道路が、街をぶち抜くという計画があって、この計画はどうも道路という名目だけれども、ビルをがんがん立てるための開発であると、これがされてしまうと、この街の雰囲気、賑わい、というのは、めちゃくちゃなことになるということを国会で質問することもできるし、住民団体と一緒に役所とかにですね、交渉に陪席することもできるけれども、もし、区長であれば、この開発計画が、本当に、そもそも正しいのかどうかと、60年ぶりに目を覚ましたみたいな道路計画が、果たして、今、ふさわしいのかどうか、ということから立論して手を打っていけるじゃないですか。」
【2011年4月17日 区長選告示日の演説(インターネットに公開)】
「皆さん、区長というのはですね、住民の代表ではなかったんでしょうか。違いますでしょうか。それとも、石原都知事の、ある種の、指令の下に動く、管理職なんでしょうか。残念ながら、この8年間、住民の代表としての顔が見えなかった。だから、このまま世田谷区が、また、その同じ区政を継承するようなことになったら街が死んでしまう。こんな思いを私、受け止めました。」
以上