「区長とシモキタ開発見直しを協働する市民の会」が「質問状および要望書」 |
「シモキタ開発見直し和解」から一周年! 保坂展人区長は、都市計画の情報秘匿・操作や官僚支配を打破し、大ナタを振るうべきとき!
早いもので、2016年3月30日の「シモキタ開発見直し和解」から1年が経ました。3月27日に提出した世田谷区長への再質問と要望です。
2017年3月27日
世田谷区長 保坂展人 様
「区長とシモキタ開発見直しを協働する市民の会」(準備会)
世田谷区代田4-24-15-102 ℡03-5355-1283
事務局長 木下泰之
質問状および要望書
本年1月13日付けで提出した要望書につき、2月23日付けで、回答書をいただきました。
要望書では、私たちは事業の当事者としての世田谷区が裁判和解を受けて、それまでの事業の在り方についての見直しの方策について語っていただけることを求めました。
これに対し、回答書では「本申し入れ書に記載の訴訟につきましては、裁判所からの早期解決の勧告(平成28年3月16日付)を受け、当区は訴訟の参加人ではありますが、裁判所で意思表明しました。その後、原告の皆様が訴えを取り下げ、東京都及び国がそれに同意し、それをもって訴訟が終了したものと認識しております。下北沢駅周辺の道路整備をはじめとする街づくりにおきましては、広く区民の理解と参加を得ながら発展させていきたいと考えております。そのためにも、参加者の多様なご意見を得ながら様々な計画を実現していくことが大切だと考えております。」と答えていただきました。
そこで、裁判所の早期解決の勧告をまずは確認しておきたいと思います。
裁判所は2016年3月16日に以下の和解条項(案)を示し、和解勧告をしています。
その内容は以下の通りです。
<以下引用>
参加人世田谷区を施行者とする東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第54号線(以下「補助54号線」という。)及び同区画街路世田谷区画街路第10号線(以下「区画街路10号線」という。)等の都市計画事業に関し、原告らが、平成18年、その差止め等を求めて提訴してから、今日まで、当事者らが真摯な主張立証を尽くしてきたこと、原告らが、平成27年12月28日,「下北沢再開発の『見直し』意見書」(以下「福川意見書」という。)を踏まえて、「原告らの和解に対するスタンス(和解案の概要)」を提案したのに対し、参加人世田谷区が,平成28年3月11日、これを大局において是認するものと評価することのできる「回答書」を提示したこと等を勘案し、本件紛争を円満に解決し、下北沢における道路整備及び街づくりに関するさまざまな意見の対立を超えて、自治の担い手である住民と行政の協働を形成することにより、下北沢の魅力を更に発展させていくことが大切であるとの認識の下に、裁判所から和解勧告がされたことを受けて、原告らと参加人世田谷区は、次のとおり、和解する。
1 参加人世田谷区は,小田急線上部利用について、「福川意見書」の趣旨に留意するとともに、「防災とみどりの基軸づくり」をコンセプトとして、東京都及び小田急電鉄と協議、調整を経てまとめた小田急線上部利用計画を発展させ、今後は、事業完了まで、小田急電鉄と調整しつつ、各事業者の設置する施設等が整合性をもって配置されることにより、駅を中心ににぎわいのある街づくりを目指し、区民等の憩いの公共的な空間となるよう整備を進めるものとする。
2 参加人世田谷区は、平成18年10月18日付けの事業認可処分に係る補助54号線及び区画街路10号線(第一期工区)について、「みどりの基軸」となる整備を基本コンセプトとする小田急線上部利用と調和した連続性のある街づくりを図るとともに、参加人世田谷区において既に検討に着手している「道路空間を活用して、まちのにぎわい創出等に資するための道路占用許可の特例制度」等を利用して、歩行者が主体で活気ある街として、一体とした街づくりを進めるものとする。
3 参加人世田谷区は、下北沢の現在の低層の街並みが地区の生活と文化を育み、下北沢を個性的で魅力のある街としていることに留意し、今後も、地域の“心”となる安全で住みやすいにぎわいの街の維持・発展に向け、下北沢の良好な街並みを維持しつつ、建築物の不燃化を適切に誘導するための街づくりを進めるとともに、その街づくりの過程において、区民参加ワークショップの開催等を通じて区民等の意見を幅広く聴き、下北沢の良好な街並みの維持・発展について必要な対応をするものとする。
4 原告らは,被告東京都に対する本件各訴えを取り下げる。
5 訴訟費用及び参加に要した費用は各自の負担とする。
<以上引用>
世田谷区は、この裁判所の和解勧告を受けて、2016年3月30日に公開の法廷で意思表明を行い、住民原告も「福川意見書の趣旨を踏まえて参加人世田谷区の意思表明がなされたものと理解した上、裁判所による平成28年3月16日付けの早期解決の勧告を尊重し、今後、上記意思表明の内容が実現するよう運動と行動に取り組むこととして、本件訴えを全て取り下げる。」と意思表明をして、その後、原告が訴えを取り下げ、東京都及び国がそれに同意し、それをもって訴訟が終了したのです。
残念ながら、回答書では、このことを認めていただきながら、1月13日の要望書で具体的に小田急線上部空間利用の見直しと補助54号線につき2期3期事業を優先整備路線から外した後の見直し対応についてお聞きいたしましところ、和解以前の計画をどのように変えていくかの方策が見えません。
保坂区長は区長になる以前の2010年5月19日に下北沢の補助54号線について、インターネット上で次の様にツイートをしています。
「下北沢『再開発』は、石原都政と小泉改革の醜悪なコミュティ破壊だと思います。下北沢を巨大道路で分断。高層ビルを建てるための条件がそろうが、実は道路はわずかな距離だけ。短い帯のような幅広い道路は、高層ビル建設を可能にするし掛け。こんな計画に道路特定財源が投入。スズナリも道路予定地。」
2016年3月30日の区の意思表明による和解と連動した東京都の2期3期事業の優先整備路線からの撤退により、「コミュニティ破壊の危機」を脱するきっかけを手にしたわけですから、保坂区長におかれては、初心に戻って対応していただきたいと切に願う次第です。
そこで以下、いくつかお尋ねするとともに、要望いたします。
記
1、福川意見書について
平成27年12月28日付けの「下北沢再開発の『見直し』意見書(以下福川意見書という)は10年間の裁判をも踏まえて都市計画の専門家も参加してつくられた重要な意見書であることは裁判所も認めているところです。世田谷区はこの「福川意見書」の提案につきどのような見解を持ち、同意見書の趣旨をどのように留意しようとしているのか、お伺いします。
2、「世田谷区小田急線上部利用計画」と「ゾーニング」について
当会の1月13日付の要望書の2項に対し、2月23日付けの区長の回答書では、
「『世田谷区小田急線(代々木上原~梅ケ丘駅間)上部利用計画』は、東京都、小田急電鉄との相互連携と信頼関係のもと、区民の皆様からのご意見を伺いながら策定したものであり、この計画に基づき事業を進めております。区といたしましては、区と小田急電鉄のそれぞれの上部利用施設計画の整合性を図り、駅を中心ににぎわいのある街づくりを目指し、区民等の憩いの場となる公共的な空間づくりを進めてまいります。小田急電鉄が整備する計画内容につきましては、現在、検討中と聞いております。本申し入れ書の内容は、小田急電鉄に伝えてまいります。小田急線上部利用を含めた周辺街づくりの整備におきましては、地域の個性を活かしながら、魅力ある街づくりの拡がりに役立てるために策定した『北沢デザインガイド』に沿い、区民及び事業者とのデザイン調整等を進めてまいります。」
と答えています。
1)見直し調整を行うにあたって「ゾーニング」を決めた「世田谷区小田急線上部利用計画」は金科玉条のものでしょうか。お伺いします。
裁判和解以前に開催された「北沢デザイン会議」やそのワークショップにおいては、小田急電鉄と協定した「ゾーニング」は動かせないと説明してきたのであり、区民からの見直し意見を世田谷区は受け付けようとはしませんでした。
2)世田谷区と小田急電鉄との間で「ゾーニング」を決めてから上部利用計画を決めるという方式は、連続立体交差事業を国の制度として律している「建運協定」(現要綱)からは読み取れません。「ゾーニング」はどのような制度に基づいて決めたのでしょうか。お伺いします。
3)2000年10月の「小田急線連立事業調査報告書」に書かれてある上部空間の施設整備計画については、行政及び小田急には尊重義務があると思いますが、どのような扱いとされたのかお伺いします。
4)連続立体交差事業を規律するいわゆる「建運協定」(現要綱)では公租公課分は無償でその余は有償ではあるが公共側の公共利用は優先される制度となっています。公共側の利用計画の見直しで、協議・協定の改定の余地はあるのではないでしょうか、お伺いします。
5)「建運協定」(現要綱)上、上部利用を行う場合、公共側が利用計画を申し出ることになっていますが、世田谷区は公租公課分以外の有償利用計画についてはどのような計画を立てたのでしょうか。お伺いします。
6)小田急線を地下化した場合には、上部には広大な利用可能な空間が生じることは、計画時にわかっていたことであります。公共空間を最大限利用しようとする具体的計画を世田谷区として立てようとしたのか否かお伺いします。
3、「自治の担い手である住民と行政の協働」を実現するために
「世田谷区小田急線上部利用計画」での「小田急ゾーン」としたところにつき、すでに大まかな計画は提示され、そのうちの一部がすすんでいます。懸念される整備についての意見はすでに区民から提示されてきました。にもかかわらず、区民の意見がどのように反映されているのか否かもわかりません。情報開示は必要条件です。「区民との協働」を前提とし、調整するとしている以上、「小田急ゾーン」の現状の計画につき明らかにされたい。また区は小田急電鉄とどのような調整をしたのか、またしようとしているのか、明らかにされたい。
1) 「小田急ゾーン」を含め、情報開示なしに、先に進めることはやめていただきたい。
2) 既に大まかな計画が明らかになっている問題については、「北沢デザイン会議」や「北沢PR戦略会議」、及びそのワークショップや部会においても、既に沿線住民や区民から要望が寄せられているところです。
以下については喫緊の課題であるので区としての対応していただきたい。
① 東北沢3号踏切付近の北側4メートルの段差の上に建築物が計画されていることにつき、沿線住民の住環境に影響がないように対応すること。
② 下北沢駅以西に小田急電鉄が駐輪場を整備するとして15億円かけて世田谷区が高架緑地を整備するとしているが、地下化した鉄道跡地に立体構造物をわざわざ構築するべきではありません。駐輪場の代替施設の検討も含め、見直しに対応されたい。
③ 鎌倉通り以西に小田急電鉄が駐車場を計画しているが、その必要性について疑義があると同時に、導線からいって危険が伴います。計画ありきで進めることはやめていただきたい。
④ 世田谷代田以西の小田急線上部に10棟連結の長屋賃貸住宅を小田急電鉄が建築したが、このようなことは、本来は公共的空間であるべき線路跡地に独占的・私的空間を持ちこむことであり、「憩いの公共空間」を阻害するものとなります。同様の企画を繰り返さぬよう指導されたい。
⑤ 京王井の頭線の土手を高架橋に付け替えた事業は、都が事業主体の小田急線連続立体事業の一環として行われた事業でもあり、155億円の事業費中少なくとも67億円は小田急線連続立体交差事業として税金が投入されています。土手撤去後の高架下を含む広大な空間の利用は下北沢地区の小田急線連続立体交差事業の一環として、都市計画上、総合的に考えるべき空間です。駐輪場や公共施設、バスベイ、タクシーベイ等に使うことも考えられるので、一体的公共的空間として利用する方策を検討し、示していただきたい。
⑥ 2000年10月の「小田急線連続立体交差事業調査報告書」には、小田急線上部利用について、広く緑道を取るような図が書かれ、まさに緑の基軸を平面で実現しており、地下駐輪場の整備も明記されていました。また、下北沢駅付近には地域行事のイベント広場の整備や区民サービスセンター、公衆トイレ、交番、情報発信基地としての創作広場(演劇の街の一翼を担う野外劇場)の整備、民間主導の都市生活機能の向上として駅前保育や都市型図書館の適切な位置の配置を検討するとされていました。南北一体化のための自由通路も明記されていました。この調査は国庫補助のついた法定調査であっただけでなく小田急電鉄も関与して作ったものであるだけに、この「小田急線連続立体交差事業調査報告書」を世田谷区としては小田急電鉄との調整に十分活用していただきたい。
⑦ 和解勧告において、「参加人世田谷区は,下北沢の現在の低層の街並みが地区の生活と文化を育み,下北沢を個性的で魅力のある街としていることに留意し」とあり、(世田谷区は)「下北沢の良好な街並みの維持・発展について必要な対応をするものとする。」とあります。「下北沢駅周辺地区地区計画」については、区が策定する計画であるのだから、地区計画地域外に導入しようとしている絶対高さ制限の規制強化に合わせて低層の街にふさわしいものに改定していただきたい。
4、2期3期が優先整備からはずれたことによる補助54号線の見直しについて
2016年4月より、東京都は下北沢地域の補助54号線2期3期を優先整備路線から外しました。事業化を検討しようにも、優先整備から外れた以上、少なくとも2016年4月より2026年3月までの10年間は事業認可された1期を除き事業着手もなくなったわけです。幹線道路に繋がらないこの道路は駅前広場の拡張スペースにすぎません。
都市計画は5年ごとに見直されるものでもあります。幹線道路に繋ぐという条件から繋がらないという条件に変わった以上、補助54号線及び駅前広場については街の邪魔にならないような工夫や状況変化に見合った活用の方策を積極的にとっていただくことを申しいれます。原告団は、第一期工区(補助54号線、区画街路10号線)について、道路占用許可特例制度等を利用して、「みどりの基軸」としての小田急線上部と有機的につながる歩行者中心の街づくりを進めることを求めてきました。
旧2期3期区間については現都市計画のままでは整備しようもなく、たとえ整備するにしても変更の必要もあり調査をせざるを得ない状況の中で、優先整備路線から外れたのであるから、補助54号線下北沢地区の所謂2期3期の整備計画がそのまま生きていることはないと考えます。区長は回答書の中で「下北沢地域の補助54号線の整備計画を取りやめたわけではなく」と答えていますが、「下北沢地域の補助54号線整備計画」とは何をもって言われているのか、この意味するところを明らかにしていただくと同時に、2期3期が優先整備路線から外れた補助54号線につき、その扱いについて再吟味していただくことを申し入れます。