保坂区長には行政訴訟和解の順守義務がある・・・9・10「北沢PR戦略会議」第3回全体会議での部会報告 |
9月10日に「北沢PR戦略会議」第3回全体会議が北沢タウンホール12階スカイサロンで開催されました。木下が行った部会報告を掲載します。
「シモキタの新たな公共空間を再考する部会」報告
同部会世話人 木下泰之
保坂区長には行政訴訟和解の順守義務がある。
「自治の担い手である住民と行政の協働」の実現を!
2月25日の28年度の「北沢PR戦略会議」報告会で、提出した部会の主意書に基づき、今後の活動を行うにあたって、3月23日付けで、区長に対して「喫緊の課題への要望と質問」を提出しましたが、回答が遅延しそうでもあったので、4月5日には、以降の勉強会に向けて、基本資料の提供を区に要求しました。
①下北沢の連続立体交差事業を採択する際に使われた「都市における道路と鉄道の連続立体交差事業の要綱」あるいは「建運協定」と「連続立体事業調査要綱」
②小田急線連続立体交差事業による上部利用に関し世田谷区が小田急とのゾーニングや費用負担を決めた際の世田谷区と小田急電鉄との協定書
③下北沢地区の小田急線連続立体交差事業に関する小田急電鉄と行政側の費用分担が判る資料。
④鉄建公団(鉄道機構)が受け持った事業につき、その費用負担とその後の顛末を示す資料。
⑤世田谷区が企画している立体緑地についての企画書や設計図など、同計画を具体的に示すもの
⑥京王線の土手改良事業について、京王電鉄と世田谷区あるいは東京都との協定等の文書。
しかしながら、これらの資料につき区当局は部会に提供することはありませんでした。
3月23日付けの「喫緊の課題への要望と質問」については、当初は下北沢地区の連続立体交差事業に関する行政訴訟原告団の継続組織である「区長とシモキタ開発見直しを協働する市民の会(準備会)」(以後「市民の会」とする)が裁判和解の実行を求めて3月27日に提出した「質問並びに要請書」との整合性を図るとして、同「市民の会」への回答の後、回答するとしていました。
ところが、「市民の会」への回答は遅れに遅れ、6月12日に文書回答がありましたが、いわばゼロ回答であり、回答時には区長の同席もない不誠実なものでした。そこで同「市民の会」は区長面談を求め区長面談要求に移り、8月29日になって、その区長面談はようやく実現しました。残念ながら、この日の区長の口頭回答はゼロ回答を上塗りするものに終わりました。
そういった一連の流れの中で、部会に対しては区側の回答は文書回答さえなく、「市民の会」に答えた通りと部会の担当職員により伝えられたのみに終わり、さらには同部会には区職員の参加さえ避けるという課長指示が出されるようにさえなり、区の積極的な情報開示に基づいて行うことを前提として始まった「新たな公共空間の再考」は暗礁に乗り上げてしまったというのが現在の状況です。
2016年シモキタ行政訴訟和解は国・東京都・世田谷区と国民・都民・世田谷区民全体を拘束する
さて、一体、住民参加や区民主体の「まちづくり」とは一体何でしょうか。情報も共有しないで「区民と行政の協働」が実現できるのでしょうか。
下北沢を巡る行政訴訟の和解は国・東京都・世田谷区と国民・都民・世田谷区民全体を拘束するものです。10年に亘って争われた司法権による行政訴訟和解を履行しようともせず、履行しない根拠について説明もしないという世田谷区は、法治国家日本の自治体であるのかも疑わしいというのが、率直な感想です。
世田谷区は2016年3月30日に公開の法廷で以下の前文から始まる意思表明を行いました。
「原告らが,平成27年12月28日に,「下北沢再開発の『見直し』意見書」(福川意見書)を踏まえて,「原告らの和解に対するスタンス(和解案の概要)」を提案し,裁判所からは,本件紛争を円満に解決し,下北沢における道路整備及び街づくりに関するさまざまな意見の対立を超えて,自治の担い手である住民と行政の協働を形成することにより,下北沢の魅力を更に発展させていくことが大切であるとの認識の下に,平成28年3月16日付けで早期解決の勧告がなされたことを受けて,参加人世田谷区は,次のとおり,意思を表明する。」
ところが、この前文について、保坂区長は「市民の会」への6月12日付け回答において完全に無視しました。そればかりか、8月29日の口頭回答では前文後の箇条書きの意思表明部分がすべてだといってのけました。この前文の後にくる箇条書きにした意思表明は裁判所の和解勧告に比べれば抽象的表現が目立つものですが、だからと言って、裁判所の具体的な勧告を踏まえて、これを受け入れている以上は、裁判所の勧告に沿ったものであることは当然ですし、和解勧告を双方受け入れて和解になった以上、和解勧告を消し去ったことにはなりません。そもそも前文を切り離して解釈しようとすることは許されません。
世田谷区の「意思表明」において、文言をあいまいにし都合の悪そうなところは省くという計略をなしたとしても、裁判所の和解勧告が明示されている以上、これを免れることはできません。10年間の具体的な証拠に基づく訴訟での論争の事実経緯も消えてなくなるわけでもありません。なによりも、世田谷区が意思表明で裁判所の勧告を否定してはいないのは区が表明した前文において明らかです。ことをあいまいにしないため、ここに裁判所の勧告を掲載しておきます。
1 参加人世田谷区は,小田急線上部利用について,「福川意見書」の趣旨に留意するとともに,「防災とみどりの基軸づくり」をコンセプトとして,東京都及び小田急電鉄と協議,調整を経てまとめた小田急線上部利用計画を発展させ,今後は,事業完了まで,小田急電鉄と調整しつつ,各事業者の設置する施設等が整合性をもって配置されることにより,駅を中心ににぎわいのある街づくりを目指し,区民等の憩いの公共的な空間となるよう整備を進めるものとする。
2 参加人世田谷区は,平成18年10月18日付けの事業認可処分に係る補助54号線及び区画街路10号線(第一期工区)について,「みどりの基軸」となる整備を基本コンセプトとする小田急線上部利用と調和した連続性のある街づくりを図るとともに,参加人世田谷区において既に検討に着手している「道路空間を活用して,まちのにぎわい創出等に資するための道路占用許可の特例制度」等を利用して,歩行者が主体で活気ある街として,一体とした街づくりを進めるものとする。
3 参加人世田谷区は,下北沢の現在の低層の街並みが地区の生活と文化を育み,下北沢を個性的で魅力のある街としていることに留意し,今後も,地域の“心”となる安全で住みやすいにぎわいの街の維持・発展に向け,下北沢の良好な街並みを維持しつつ,建築物の不燃化を適切に誘導するための街づくりを進めるとともに,その街づくりの過程において,区民参加ワークショップの開催等を通じて区民等の意見を幅広く聴き,下北沢の良好な街並みの維持・発展について必要な対応をするものとする。
シモキタ開発見直しを公約に当選した保坂区長こそ行政訴訟和解を最大限活用すべき
この和解勧告を踏まえれば、10年の司法論争を踏まえて作成され、裁判所から趣旨に留意することが求められた「福川意見書」が「まちづくりの過程において、様々なご意見や考え方、立場をお持ちの方からいただく区民意見の一つ」(区の「市民の会」への回答書)としてかたづけられてよいわけはありません。
また和解勧告にあるように、「東京都及び小田急電鉄と協議,調整を経てまとめた小田急線上部利用計画を発展させ,今後は,事業完了まで,小田急電鉄と調整し」なければならないし、上部利用は「区民等の憩いの公共的な空間となるよう整備を進める」必要があります。そしてなによりも、「下北沢の現在の低層の街並みが地区の生活と文化を育み,下北沢を個性的で魅力のある街としていることに留意し」て「下北沢の良好な街並みの維持・発展について必要な対応」に努めなければならないのです。
そもそも、下北沢のまちづくりの見直しを公約に当選した保坂区長にとっては、この司法判断こそ最大の根拠として活用することこそ、区民への約束を果たすことになるのではないでしょうか。
北沢PR戦略会議について、区長は「裁判和解での区民との協働を果たす一つ場である」との認識を3月の区議会本会議で示しています。ところが、この間の保坂区政の私たちの部会への対応はこの答弁に背反するものです。
当部会は、下北沢の街づくりの見直しを進めるため、司法判断を根拠に区の約束である「自治の担い手である住民と行政の協働を形成する」ために、今後も奮闘する決意です。
保坂区長に猛省を促すとともに、今後とも司法判断の順守を求めていくことを表明しておきます。