駅舎情報を得ていないという欺瞞(ギマン)と、議事録「不存在」の欺罔(ギモウ) |
これに関連して情報開示請求も行ってきました。世田谷区長の情報開示請求への非開示及び不存在決定に対しては、審査請求を行っています。審査会によるその意見聴取が10月23日に行われました。
この意見聴取の際に提出した文書をここに掲載します。
小田急線跡地利用区民意見検討委員会の問題についても触れてありますので、この問題に取り組んでいる方はお役に立ててくださるとありがたいです。
駅舎情報を得ていないという欺瞞と、議事録「不存在」の欺罔(2009年10月23日)
異議申立人 世田谷区議会議員 木下泰之
1、はじめに
私たちは以下の4つについて情報開示を請求した。
①小田急線上部利用区民意見検討委員会の議事録の全て
②「鉄道跡地を利用した公共施設計画のアイディア」募集に関するQ&Aマニュアル
③小田急電鉄小田原線連続立体交差事業協議会の議事録の全て
④小田急線地下化に伴う下北沢駅舎の位置及び構造図面
これらの情報についての、異議申立書は7月6日付で提出した文書のとおりである。
②の「Q&Aマニュアル」については、下平憲治氏が北沢総合支所で見たものと公開されたものが異なっているとしているので、同氏の証言を聞いていただいたうえで、調査のうえ対処していただきたい。
①は世田谷区が設けた検討委員会についての、③は東京都が事務局を務める協議会についての、それぞれの議事録を求めたものである。
最近駅舎問題では、小田急がイメージ図を作成し、10月1日より世田谷区が区民にこれを配布し意見を求めるという動きがあった。関連して④の駅舎の情報のあり様について考えるとき、如何に①と③の議事録が必要であるかが明らかになると思うので、④の駅舎の情報について論じ、知っていることについて知らないといい、議事録を作成しないと言い張る官側の論理の破綻を検証したい。
2、都市計画権者が駅舎の位置や構造の想定なしに都市計画は立てられない
2003年1月31日に、東京都は小田急線連続立体交差化事業(梅ヶ丘駅・代々木上原駅間)の都市計画決定と都市計画道路補助54号線の都市計画変更を、世田谷区は補助54号線に付属する駅前ロータリーであるところの区画街路10号線を新規に都市計画決定した。2004年3月23日には東京都は連続立体交差事業の国の事業認可を取得し、後に、世田谷区は補助54号線と区画街路10号線の事業主体となり2006年10月18日には2つの事業の事業認可を東京都から取得した。なお、あわせて同日、世田谷区は下北沢駅周辺地区地区計画を都市計画決定している。
ところで、⑤の「小田急線地下化に伴う下北沢駅舎の位置及び構造図面」については、私たちは東京都に対しても世田谷区と同時期に情報開示請求を行っているが、東京都も世田谷区と同様に、小田急線連続立体交差事業の事業認可申請時の鉄道構造とエスカレーター等の導線を載せた図面であるところの「東京都市計画都市高速鉄道9号線小田急電鉄小田原線設計概略図」しか示して来なかった。これでは駅舎計画の全体構造が分からない。
鉄道の設計にあたっても上部に建てる駅舎等の荷重計算もあるだろうし、駅前ロータリーを設計するにあたっても、駅舎の広さや位置構造が関係するだろうから、想定される駅舎の位置や構造を示す文書・図書はあるはずである。また、そのような文書・図書を、東京都や世田谷区が手にしないで、東京都においては連立事業の種々の計画がそもそも立てられなかったはずであり、世田谷区においても駅前ロータリー計画や周辺の街づくり計画も立てられなかったはずであるから、私たちは、検討した駅舎についての計画文書なり、想定図書なりの関連する文書・図書の全てについて開示してほしいという趣旨を世田谷区と東京都の情報開示手続を扱う窓口で伝えたうえで、それぞれ情報公開を求めてきたものである。
3、世田谷区が駅舎を上部利用の検討外に置く怪
ところで、東京都は私たちの異議申し立てについて、本年8月31日に「理由説明」を返してきたが、その文書の中で、「開示文書を選定した理由」という表現を使っている。これはその他に文書があるという意味である。また「概略図」を示したが、概略図というのであればそのもとになる詳細図があるはずであり、それも示していない。
さて、ともあれ、世田谷区は、平成21年5月11日の時点で私たちが「想定される駅舎の位置や構造が把握できる図面」について、関連する文書は「東京都市計画都市高速鉄道9号線小田急電鉄小田原線設計概略図」以外はないとした。
下北沢の駅舎については世田谷代田、東北沢の駅舎も含め、小田急電鉄がこのほど「駅舎整備イメージ」を作成したとして10月1日より、世田谷区がこのイメージ図を掲載したパンフレットを沿線住民に配布し、10月19日までの日程で意見を求めた。世田谷区は寄せられた区民等の意見をまとめて小田急電鉄に伝えるとしている。
一方、昨年の7月8日に世田谷区が発足させていた「小田急線上部利用区民意見検討委員会」は12月8日(第2回委員会)、3月31日(第3回委員会)、5月13日(第4回委員会)、6月23日(第5回)、9月1日(第6回)の会合を経て「中間まとめ」をおこない、世田谷区はこの「中間まとめ」を記載したパンフレットを上記「駅舎整備イメージ」のパンフレットとは別だてで作成し、10月1日より両パンフレットを同時に沿線住民に配布し、この「中間まとめ」への意見を10月31日までとして求めている。
小田急線は連続立体交差事業で地下に潜り、その上部には30数メートルから20数メートルの幅で2キロメートルにわたって事業跡地ができる。連続立体交差事業を規律する「建運協定」によると、上部跡地利用については、電鉄側の電鉄事業の運営につき駅舎等の鉄道施設の必要最小限の利用を除き、行政が申し出れば、その利用が優先されるとされている。その上部の跡地利用を検討するのであるから、駅舎も含めて区民から意見募集を行えばよいのに、昨年8月1日より区民に求めた意見募集では、「鉄道事業者施設(駅舎等)および都市計画決定している都市計画施設、ならびに関係機関と協議し位置、規模等を定めている駅前広場については募集対象外です」とわざわざ断り、意見募集の対象外としている。
4、駅舎の想定がなければ検討委の「中間まとめ」はありえない
木下は世田谷区議会議員であることから、今回の「上部利用区民意見検討会」と小田急線の「駅舎整備イメージ」発表との関係を10月初頭に交通企画の担当課長から事情聴取することができた。
事情を聴取したところ、
小田急電鉄が駅舎についての構想ができたと世田谷区に伝えてきたのは8月中旬であるが、9月1日の「上部利用区民意見検討会」ではその報告はなされなかった。
「駅舎整備イメージ」の図版が出来上がり届けられたのは委員会終了の後日であった。森下副区長の判断で、10月1日より同時に沿線住民にそれぞれのパンフレットを配り意見募集を行うことが決定された。「上部利用区民意見検討会」の外部委員には決定後、その旨伝え了解を得られた。
なお、次回(第7回)委員会は10月21日であり、上部利用の意見募集は10月31日までであるが駅舎意見の募集締め切りは10月19日である。
とのことであった。
駅舎のレイアウトや構造と跡地利用が密接にかかわっていることは言うまでもない。駅舎のありようにより上部の導線は影響を受ける。にもかかわらず、区民にそれぞれの計画を発表し意見募集を得ようというのに、相互の計画は相互が知らないまま進行したというのである。このようなばかな話があるだろうか。しかしながら、世田谷区の担当者によると、まさにそのようにやったというのである。
だがしかし、上部利用の「中間まとめ」をみると、今回の駅舎計画は想定のもとにあることがよくわかる。それは下北沢の駅舎が導線を塞ぐことを想定しての導線計画が堂々と示されているからだ。
以前に世田谷区が上部利用計画をつくった際の図をみると、下北沢の駅舎の南側には通路が想定されており、駅舎図にもそのことが反映されて、通路分が駅舎から除かれている図となり、駅舎はその分細くなっていたのである。
ところが、今回の「中間まとめ」では、緊急避難車両の導線は下北沢で遮られ、補助54号線を使って鎌倉通りまで出て、ここから鎌倉通りを通り、鎌倉通りと交差する線路跡地まで南下した後、世田谷代田に向かう線路上の導線とつながるよう報告されているのである。
5、避難路導線にみる矛盾――区は駅舎計画を当然知っていた
昨年8月1日から10月31日まで世田谷区は上部利用計画の区案(たたき台)を示して、区民等から意見を募集したが、この意見募集においても、東北沢駅から世田谷代田駅方面への避難路の導線は緊急車両の通行も含めて線路跡地上をつながることを希望する意見が多かった。しかしながら、下北沢駅ではこの導線が断ち切られることを想定して「中間まとめ」がなされている。
これは何を意味するだろうか。
当たり前のことではあるが、すり合わせはできていたのである。
世田谷区が小田急線の駅舎構造について情報を得ていないなどということは真っ赤な嘘としか言いようがない。
10月15日の決算特別委員会の補充質問で、駅舎と上部利用を全く関係なく計画するのかと問いただしたところ、私の質問に答えて、担当部長は「跡地利用についての要望は小田急電鉄に伝えてある」と答えた。
「区民意見検討委員会」の検討を受けて世田谷区は、避難路・緊急車両の導線を小田急電鉄に対して、どうぞ塞いでくださいと要望したのだろうか。
このような茶番はやめてもらいたい。
6、都市計画案時より拡大した駅舎の範囲
世田谷区議である木下が10月に開催された決算特別委員会質問にあたって、これまでの経緯を精査したところ、次のようなこともわかった。
小田急電鉄の連続立体交差化と駅前ロータリー及び補助54号線の都市計画について、行政案を区民に初めて示した素案説明会(2001年4月)の際と都市計画案説明会(2002年2月)の際の会場配布のパンフレットをみると、下北沢の駅舎は駅前ロータリー広場の西端の同一線で切れている。
2005年(平成17年)2月に世田谷区は「小田急線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)の上部利用について」を作成し、区民に公表しているが、この図をみると、上部利用検討にあたって駅舎の位置と面積は広場西端から80メートルほど西に延長されている。今回の小田急電鉄の図でいくと全体で跡地全幅を130メートル塞いでいる。50メートル足らずであった当初の駅の長さがいつの間にか3倍近くの長さに膨れ上がっていたのだ。
7、駅舎と跡地利用計画は切り離しては考えられないし、考えてはならない
これは都市計画案から事業認可に至るまでの間に、駅舎の計画を変えたか、当初からの計画を都市計画案の際には伏せたかのどちらかである。
なお、前述したように、2005年2月に公表された前記「小田急線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)の上部利用について」では、下北沢南側に避難経路がもうけられてあり、その分、駅舎の幅は狭くなっていた。
いずれにせよ、駅舎の広さや位置、構造は小田急電鉄と公共側の権益にかかわり、公共側としても国や東京都及び地元自治体との利害調整もあるのであるから、早い段階で、駅舎計画については想定され、それをたたき台に議論が交わされ、一定の時期に関係各団体間で大まかな合意ができていなければ、事業は前には進まなかったはずである。その後、住民対策や時代の変化に沿って変更を加えたにしても、想定される駅舎の文書や図面を相互参照することもなしに、この事業の計画が進められてきたとは全く考えられない。
8、議事録を取らないといった欺瞞・欺罔を許すな
これまでの、記述で、世田谷区が区民に対し、如何に説明責任を果たしていないかが明らかになったと思う。本来、国民・住民のサーバント(下僕)であるべき役人が、国民にも住民にも選挙で選出された議員にも、税金を使って行われている「区民意見検討委員会」や他行政機関と民間会社を含む「協議会」で何が議論されたかについて、記録も残さないとしたら、この国は民主国家でもなければ、近代国家ですらない。
自治体間および民間との協議会や検討委員会等審議会での議事録を取っていないとして、これを文書不存在として主張する、このような欺瞞、欺罔は到底許されるべきではない。
委員のみなさんに置かれては、この事案を具体的に調査され、糺されること切に願いたい。このようなことを役人にされていたら、先人が切り開いた情報開示制度の意味もなくなってしまうからである。
添付資料
1、2001年 4月「小田急線連続立体交差事業」都市計画素案説明会配布資料
2、2002年 2月「小田急線連続立体交差事業」都市計画案説明会配布資料
3、2005年 2月「小田急線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)の上部利用について」
4、2008年 8月「鉄道跡地を利用した公共施設計画のアイデア」募集配布資料
5、2009年10月「駅街ニュース №1」(小田急線3駅整備イメージ)
6、2009年10月「小田急線上部利用通信 №4」(検討委員会中間まとめ)
以上