東京オリンピック誘致決議への反対討論 |
東京オリンピック誘致決議への反対討論
○山口ひろひさ 議長 これより意見に入ります。
なお、意見についての発言時間は、議事の都合により一人十分以内といたします。
発言通告に基づき、順次発言を許します。
二十四番木下泰之議員。
〔二十四番木下泰之議員登壇〕
◆二十四番(木下泰之 議員) 議員提出議案二号に反対の立場から討論を行います。
莫大な招致費用、開催費用をかけて行われるオリンピックの東京招致には私は反対であります。二〇一一年三月十一日に、日本は何を受け、何を引き起こしたのか。震災という未曾有の大自然災害を受け、原発事故という未曾有の人為災害を引き起こしたのであります。
震災地域の復興は言うに及ばず、被害民への救済はおくれております。原発事故は深刻です。福島第一原発事故は、政府発表に基づいてもセシウム量で計測して広島型原爆百六十八個分に相当するというふうに言われております。いまだに放射能漏れは、大気への放出、汚染水の海洋への流出とも両方ともとどまっておらず、使用済み燃料棒を満載した四号機プールの倒壊と新たなる甚大な放射能汚染が危ぶまれております。
汚染がいまだ進行する原子炉については、作業員が近づくことすら不可能な状態が続いております。原発事故の高汚染地でさえ、本来避難しなければならない被害民は子どもも大人も避難することさえかなわず、とめ置かれております。
被害は関東にも当然及んでおり、群馬県川場村や東京の東葛地方は言うに及ばず、世田谷にも汚染は存在します。政府は、福島第一原発の高汚染地域でさえ、また、関東についてはなおさら、内部被爆をすると深刻なプルトニウムなどのアルファ線核種、ストロンチウムなどのベータ線核種の計測をきちんと行おうとさえしておりません。
空中計測での市街地でのセシウムのガンマ線量は下がったとしても、山林や原野に降った放射能は除染もかなわず、昆虫にも異変が生じ、河川を通じて河口に、また海洋に流れ出ております。
陸、海洋を問わず食物連鎖は続き、獣肉や魚などへの汚染の集積が進んでおります。日本にとって極めて深刻な事故であるにもかかわらず、政府は事故の実態に向き合おうとしないばかりか、その影響の観測さえ怠り、あるいは知った情報も秘匿を続けております。
一方、東南海地震、関東直下型地震のおそれや、富士山の噴火の前兆の兆候をも疑われる周辺変動も報道されております。これらに対する対応も不十分ですし、活断層だらけの日本では、原発直下の活断層のある原発が新たに発見され、対応に苦慮しております。
オリンピック誘致など、冷静に考えればあってはならないことであるはずであります。ところが、事態の改善は進んでいないのに、表面を取り繕い、安倍政権登場以降は、政府は原発のさらなる再稼働を公然と主張するばかりか、原発はアベノミクスの必須条件とさえ言い出す始末であります。また、最近来日したフランスのオランド大統領と原発の第三国への輸出や核燃料サイクル政策で連携することを確認するに及んでおります。
オリンピック誘致は、日本はノープロブレムであると、その合唱の音頭取りと言っても過言ではないでしょう。オリンピックは政治と無縁ではありません。ヒトラー・ドイツのベルリンオリンピックはその最初のあらわれであったでしょうが、オリンピックが社会や政治の暗部を隠蔽する権力者の道具として利用されてきたことに思いをはせなければなりません。
本日、この世田谷区議会に三十四名もの議員の共同提出議案として、オリンピック誘致決議が上げられようとしていることに私は危惧を感ぜざるを得ません。膨大なオリンピック誘致費や開催費は、被災地支援と復興予算に何よりも先に使うべきであります。原子力汚染封じ込めと新たな原発事故を抑止し、使用済み核燃料処理問題の解決とその懸案は山積みされております。日本を希望の国に転換するには、原発問題を直視し、原発をとめることからしか始まらないと私は確信します。
原発をとめる決心をしてこそ、技術力と豊かな自然を生かす新生日本が始まるのであります。原発に頼らない社会と経済の再建こそ目指すべきです。
震災復興が実現し、そして原発事故を真に克服したときこそ、新たな気持ちでオリンピックを誘致し、開催を検討すべきでしょう。福島を克服し得たと、開会式で開催首長が語れる日こそ目指すべきであります。また、福島を克服したということは、我々は、広島、長崎の原爆被害も我が国民は受けてきた、そういったことにも思いをはせる、そのようなオリンピックになることでしょう。
国民の脱原発の意思に反し、収束もしていない原発事故から目をそらせ、放射能被害をないもののように扱おうとするオリンピック誘致とオリンピック開催は、国民を幻惑させ、目を曇らせようという動きそのものだと言わなければなりません。
そのような動きに手をかす本議会の東京オリンピック誘致決議には反対であると表明し、反対討論といたします。
○山口ひろひさ 議長 以上で木下泰之議員の意見は終わりました。