平成26年度予算編成に対する意見・要望(その5) |
脱原発こそ時代を拓く みどりの先進国を世田谷から
放射能から区民を守り、大規模再開発を見直せ。
住区協議会を創設し、区政と地域に本物の民主主義を!
「緑の党Greens Japan世田谷」 区議会議員 木下泰之
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【その4より続く】
(4、平成26年度予算要望)
4)大規模公共事業の抜本的な見直しで、福祉・教育・環境予算を
a連立事業
世田谷区内では小田急線連立事業に引き続き、京王線連立事業が計画されている。連立事業は鉄道の立体化を契機に新たな都市計画道路整備を含め都市再開発を合わせ行うことが、セットとなった総合再開発事業であり、国が半分を出資する国家的事業でもある。この総合再開発計画事業のマスタープランは、国庫補助を伴う「連続立体事業調査」を東京都が地元自治体と協力しながら行うことによって成り立つはずのものであるが、この調査については大場区政の時から報告書を受領もせずに、事業にのみ協力するという世田谷区の自治権を侵す形の体制で行われてきた。
連立事業は新規都市計画道路が必要かどうかの吟味もされないまま、また住民参加もないがしろにして、大規模再開発ありきで行われてきた。
a-1■小田急線連立事業 下北沢地下化工区の上部利用
下北沢地区での小田急線地下化の後の跡地の利用計画も本来は、連立事業調査の際に住民参加を取り入れて行われるべき(「連続立体交差事業調査要領」)であるが、そうされてはこなかった。連続立体交差事業調査要領に基づき、東京都実施主体となり小田急電鉄の協力のもとに行われた法定の事業調査の報告書は2000年10月にまとめられ、現在の鉄道地下化による連立事業を採用することを結論付けている。この報告書は、連立事業が総合事業であるという性格から、実施要領に従い、駅前広場の整備や周辺の道路計画や街づくり計画とあわせて、上部利用計画についても概要が記述してある。
巻末には跡地上に自転車と並んで人が行き来できる緑豊かな遊歩道がカラーで描かれ、地下駐輪場の絵が示されてある。環状7号線上部の小田急線の鉄道橋の歩道橋への付け替えの必要性が記述され、防災貯水池の設置や、下北沢駅付近の整備として演劇の町にふさわしい「創作自由広場」の設置まで記述されているのである。
しかしながら、世田谷区はこの調査報告書を2000年10月の時点では東京都から受領もしていなかったとしており、下北沢地区の都市計画事業決定の後、市民が情報開示で同報告書を受領した後に、私の議会質問をきっかけに手に入れたことにしているのである。
後に、小田急線の上部利用計画につき、世田谷区が上部利用検討委員会を作った際にも、この委員会の審議にからめた市民参加のワークショップにおいても、この調査報告書が本来は検討のベースになっているのにもかかわらず、世田谷区はこの文書を表向きには基本文書としては扱ってこなかった。
法定調査の調査要領によれば、報告書を作成する都道府県が基礎自治体の意向を汲んで調査報告書を策定することになっており、実際に同調査報告書には世田谷区提供の街づくり関係資料もふんだんに使って作成されているのである。連立事業は事業認可が行われてから連立協議会を作ることになっているが、当然のことながら調査報告書は調査の段階から、後につくられることになる連立協議会構成メンバーの共同作業で作られるものであり、鉄道事業のみならず関連事業を含めた総合計画のチャートでもあるのである。
ところが、市民参加のワークショップの際にはこのチャートの存在は無視され、市民は上部利用の制度的規範であるいわゆる「建運協定」やこの協定上の制約も説明されることもない。このようにして準備されてきた小田急線の上部利用計画の策定過程の虚偽性を認識することからしか、まっとうな見直しは出来ない。
a-2■下北沢小田急線上部利用計画問題をリーズナブルに解決するために
世田谷区が上部利用につき2011年2月に区民に公表した跡地利用計画の区案を、新区長である保坂区長の下で3・11以降の事情を踏まえ修正を加えた区素案として2012年7月に区民に新たに提案し、意見募集したことについて、東京都と小田急電鉄がクレームをつけたことで、大騒ぎになった。
東京都と小田急電鉄曰く、連立協議会で合意をしていないものを区が勝手に示したことはけしからん、区民に不要な誤解を与えるというのである。
しかしながら、この言い分は2重3重に間違っている。第1に、連立協議会で合意した文書を2011年2月に区案として示させたことである。区民側は世田谷区案としてしか受け取っておらず、区への意見を述べ、区へ要請することによって意見はまとめられていくだろうと考えているだろうからである。第2に、この2011年2月に上部利用計画案を区が区民に示したうえで3月に意見募集することは正しかっただろうか。統一地方選は4月に予定されており区長は引退を表明していた。区長交代が分かりきっているのに、意見募集をすること自体不見識だし、議会改選時のドサクサにこのような重要案件取り扱って良いはずがない。第3に、3・11という時代を画する事態が生れた以上、上部利用計画は見直されてしかるべきである。
ところで、区民から見て、世田谷区の上部利用計画についての説明対応や意見募集対応は正しいだろうか。第1に上部利用計画について、その制度的成り立ちや、必要条件を示しもしないで、意見募集しても仕方がない。世田谷区も東京都も、他人の土地を使わせてもらうのだから、小田急と交渉するというような言い方をしているがこれは間違いである。公共事業として都市側に優先使用権があると読むことの出来るいわゆる「建運協定」10条がある以上、この存在を明示して、ワークショップを実施したり意見募集をしなければ意味がない。
第2に「建運協定」10条に、公租公課分は無償で、その余の空間は有償でとしている以上、その有償価格を明示するなり考え方を示すなりして、区負担がいくらになるのか。補助事業の担保はあるのかを明示しなければ意味がない。
第3に、そもそも、上部利用計画は連立事業調査時に、小田急線の地下化方針が定まった時点でその方針を明示し、関連事業の一環として広く意見を募集して上部利用のあり方を定めていくべきであって、その費用計画の概算が示されていて然るべきものであったはず。世田谷区が今回示した上部利用の区案の図面に小田急電鉄の住宅開発計画が書かれているが、小田急電鉄が都市側の公共使用以外の残地を使って何をするのか駅舎付近の駅ビルはどうするのか、商業施設がどうなるのかの計画意向を明示せずに、上部利用の意見募集を区民に求めること事態が失礼な話しである。
上部利用問題を正しく解決するために留意しなければならないことを、以下に書き示しておく。
「都市における鉄道と道路の連続立体交差に関する要綱」(いわゆる「建運協定」)10条は、連続立体交差事業で新たに生じた空間についての利用規定が書かれてある。連立事業はいわば立体交換事業とも言えるものであり、事業前には鉄道敷きとしてしか使えなかった土地に高架事業では高架下の空間利用が、地下化事業では鉄道跡地空間の利用が公共投資を経て使えるようになるのであるから、その空間を鉄道事業者の自由にしてしまうことは税金を使って私企業の便益を増すことに使われてしまうことになる。そこで建運協定10条は連立事業で新たに生じた空間について都市計画税の減免と引き換えに高架下の15%を公共側が無償で使え、その余の空間については、鉄道運行上必要不可欠であるもの以外の空間については有償ではあるが、公共側が申し出れば、電鉄側は協議に応じなければならないことになっている。その際、有償の額が問題と成る。この有償はいくらが妥当なのであろうか。
ところで、連立事業は東京都(都道府県)が行う公共事業ではあるが、公共事業を行うことによって電鉄会社が受益を受ける額について建運協定では高架計画の際には14%(東京都の場合、小田急線事業認可時)と定め、これを負担することになっている。ところが、地下化事業の際はこの受益額については交渉によって定めるとしている。この「交渉」によって下北沢工区で行われている事業で小田急電鉄はいくらはどのくらい払うことになったのであろうか。この額はオープンになっていて665億円中50億円であり、7.5%にすぎない。高架下より、地下化にした上部利用空間のほうが利用の自由度が高いわけだから、高架下利用より受益が増すはずである。にもかかわらず、何故、7.5%で済むのであろうか。その受益計算の詳細は明らかにされていない。
結局、地下化事業の際の上部利用問題を考える際には、受益を固定(事業認可時14%)して支払うことになる高架化の場合とは違って、受益負担の交渉の際、どのような受益計算をしたかによって、有償の際の額の妥当性が決まってくるはずである。
しかるに、電鉄会社と都市側(東京都)がどのような受益負担の交渉をしたのかは未だに不明である。
2013年10月の都市整備委員会では上部利用についての新たな区案が発表になったが、ここで下北沢駅前ロータリーとして整備する区画街路10号線用地については公課公租分として無償利用するのではなく都市計画事業用地として買い上げるという方針を発表した。
建運協定上は一番高い土地を優先無償利用しても良いはずだが、担当者は都市計画事業であるので、国からの補助金が付くので区としての財政支出は少なくて済むと説明した。しかしながら、世田谷区の負担がどうであろうと、国を含めた行政支出は10億ほども増えるわけであり、小田急電鉄優遇としているに過ぎない対応である。
このような大企業優遇の対応を改めない限り、日本全体の財政再建と公正な行政運営はおぼつかない。建運協定を厳正に適用し、下北沢の一等地である現行駅の跡地こそ無償提供させるべきである。事業全体の行政支出の世田谷区の負担分は別の協議をすればよろしい。
a-3■京王線連立事業
京王線の連立事業においては平成元年の報告書では調布駅・笹塚駅間の一体的な事業計画の検討の重要性がまとめに書かれていたが、その後の事業は調布付近が先行する形で行われ、その結果、世田谷地域では在来線の高架計画が誘導されるように巧みに仕組まれてきた。
構造形式の費用比較・積算根拠については、保坂世田谷新区長に示された調査報告書は、市民に示されたのと同じく黒塗りのものとなっており、このような秘匿体制の下で進められる連立事業は抜本的に見直される必要がある。保坂区長はこの黒塗り情報を2011年8月に受領した後、全面開示を求めていると議会で答弁していたが、2012年第三回定例議会の決算審査の際に確かめたところ、文書で正式に情報開示請求していないばかりか、今後もする気はないと答えている。
既に、2012年10月2日に当該の京王線連立事業は東京都により都市計画が決定され告示された。あわせて、在来線の高架を前提とした側道と明大前駅及び千歳烏山駅の都市計画は世田谷区長が決定告示したわけだが、世田谷区長は高架・地下の事業比較の全貌を精査せずに東京都の高架計画を是認したことになる。加えて言えば、これまで世田谷区が調査報告書を「受領していない」としてきたこと自体が疑わしいし、受領しないこと自体、情報を操作し区民を欺罔する犯罪的行為として断罪されなければならない。
さらに、これまで、事業開始の日程さえ知らされていなかった京王線と交差する二本の都市計画道路の補助154号線と補助216号線の測量の説明会が、京王線連立事業の都市計画が10月2日に決定されるや、通告され10月中に相次いで実施されるにいたった。もともと、この2本の都市計画道路の整備着手が街路事業としての京王線連立事業の前提をなしているのだから、連立事業の計画時に道路整備の是非について区民や地権者に問われていなければならないはずである。しかしながら本来一体で企画されている事業を分断し、 前提条件たる2本の都市計画道路の事業開始を隠して鉄道側の都市計画手続きを行い、決定を見ると、速攻で測量説明会を行うなどはヤクザまがい詐欺師まがいのやり口といわざるを得ない。
加えて言えば、世田谷区は平成23年度で切れるはずだった道路整備方針の調整計画の期限を2年延伸し、平成24年度に策定するはずだった新道路整備方針の策定の時期を平成26年度に変更した。新道路整備方針を平成24年度に策定することになると、京王線連立事業の前提となっているこの2本の道路や、小田急線連立事業がらみでも懸案になっている補助54号線や補助26号線、補助52号線、補助128号線、補助133号線等の是非の議論を、公約としては大型公共事業の見直しを掲げて当選した保坂新区政の開始と同時に議論されていくことになる。この事態を避けての新道路整備方針策定の順延といわざるを得ないのである。
保坂新区長はこのような姑息な対応をやめ、世田谷区の道路計画のあり方を公約に照らしながら、即刻見直すために、区民との議論に入るべきである。これから事業認可に向かおうとしている京王線連立事業はその進行を凍結し、都市計画自体を見直すべきである。また、既に進行している小田急線連立事業も含め、連続立体交差事業にかかわる事業、都市計画道路、駅前広場、周辺再開発問題を精査し、事業の見直しを進めるべきである。
311の大震災では東北新幹線の橋げたが崩れたという事例でも象徴されるように高架構造物の安全性や安定性に疑問がある以上、これから事業を行う京王線については線増線を含めた4線とも地下化、あるいは在来線のみ(線増線は必ずしもつくらなくてもよい)を地下化し、上部は緑道として整備するべきである。そうすれば、日常は散歩道に、非常時には帰宅困難者の帰路や、周辺住民の避難道として活用できる。
なお、連立事業は駅前広場や新規都市計画道路等、関連事業に巨額の投資が合わせて行われることになっているが、鉄道の地下化は周辺環境を著しく変えずとも実現でき、巨額の公共投資を抑えることにもつながる。
b、外郭環状道路
国の財政がひっ迫し、東日本震災の復興や原発事故の後始末に巨額の財政が必要になっているこの時勢で、外郭環状線事業をすすめることは罪悪である。また、エイトライナー等の環状交通システムも計画が検討されているが、むしろこちらの方が、環境に優しい。自動車に頼らない代替交通システムの構築をこれからは考えるべきである。また、物流を自動車輸送に過度に依存することは、これからは止めるべきである。新幹線貨物なども考えるべきだ。
保坂区長は外郭環状道路については、反対だったはずであるし、着工地は世田谷の土地であったわけで、使用についての拒否も出来たはずである。7項目の要望条件を示したものの、着工申請手続きが完了するまでこの要望条件についての情報は区民には公表されず、区民や市民運動側はこの7項目要望条件を国との交渉に生かすことさえ出来なかった。これでは、7項目要望は容認へのエクスキューズと受け取られても致し方ない。
職責上、実務を実行しなければならないこともあろうが、着工式に祝電を送る必要があるのだろうか。
外環は不要不急な公共事業として代議士時代の初心を貫き凍結を目指すべきだ。
2013年には計画地から土壌汚染対策法に係る有害物質が発見されたが、国はおざなりな対応でこれを済まそうとしているが、世田谷区もこれに加担してきた。対応を根本的に改めるべきである。
c、二子玉川再開発
バブルのころに、計画された超高層による二子玉川再開発事業は撤退すべきだ。基盤整備を自治体持ちで行うこの事業は世田谷区の財政を苦しくさせる。首都圏最大の風致地区である二子玉川に超高層ビルを建て、さらに、いつ完成するともわからないスーパー堤防事業を組み入れることは止めるべきである。
2期事業は撤退し、既に起こっている風害の対策をたてつつ、風致に相応しい街にへ転換するために知恵を絞り、全体計画を区民参加で考えなおすべきである。
デジタルコンテンツ産業誘致におけるコンサルタント会社の不正については、調査報告が示されて、一定の処分がなされたが、本来の責任の所在はこの事業を発注した当時の熊本区政にある。負債についての求償請求を熊本区長に行うとともに、デジコン不正事件の構造的背景を徹底究明し、今後の区政運営に生かすべきだ。
風害が深刻な問題を呈している。人が歩行に耐えられないような風害が生じているにもかかわらず、新たに被害を増加させる二期工事を止めようともしないのは、環境アセスメント制度の存在自体を否定していることになる。
免震構造の超高層ビルが、必ずしも震災に強いとはいえなくなっていることは、長周期地震動の地震の研究が進むにつれて明らかにもなってきている。二子玉川再開発は311以降の見直しをすべき再開発事業の典型でもあるはずだ。
d、都市計画道路、主要生活道路の見直し
連立事業の一環として都市計画道路の新規着工などが予定されているが、戦後の都市計画の歴史を振り返り、都市計画道路については、縮小の方向での再検討が必要だ。現在の都市計画道路のほとんどは1946年の戦災復興計画で線引きがなされたものだが、同都市計画は都市部をグリーンベルト地帯で囲み、道路の両サイドや鉄道の両サイドに広範な緑地を配し、都心に向けて楔形に緑地を入れていくという計画の一環として、計画されていたものである。人口規模も六百万人とされていた。
その後、緑地は廃止され、道路計画のみを残してしまったのが、現都市計画である。このような歴史を踏まえた上で、全体のバランスを考えて道路計画は見直されなければならない。
主要生活道路についても、街の高層化をねらう様なものは、かえって住宅地域を住みにくくするものであるから、見直しが必要である。
小田急線下北沢の連立事業や小田急線騒音訴訟で、1962年の運輸政策審議会答申に関しこの審議会の事務局責任者を務めた官僚の証言が陳述録取書として提出されたが、これによると、当時の運政審6号答申は戦前からある私鉄網の間に地下鉄を入れ多摩川地域まで延伸させ東京都民が歩いて暮らせる都市をめざしていた。ところが、小田急電鉄などを筆頭に私鉄各社と建設族が反対し、地下鉄計画は在来私鉄に張り付けられる都市計画に変えさせられたのだという。1964年のオリンピックを前に道路建設族やモータリゼーションに絡む利権が都市の在り方に大きく作用したのである。
2020年のオリンピックを前に、同じような轍を繰り返してはならない。
5)肥大化した行政システムの見直し、外郭団体の整理
パーキンソンの法則ではないが、官僚組織はほっておくと増大する。たえず見直しが必要である。商工行政や啓発広報などは、過剰となることが多い。本来商工業者に任せておけばよい事業への過剰なサービスや介入はかえって商店街や職業団体の衰退や不活性化を招くので、精査されたい。各種啓発広報なども過剰なものが多い。
外郭団体のなかで、まちづくりトラストについていえば、まちづくり部門は要らない。緑のトラストと都市再開発とは水と油の関係にある。まちづくりセクターは、もともとは都市整備公社の流れをくんでいる。まちづくりと称しながら、開発誘導のお先棒担ぎが数多くみられたし、まちづくりセクターを「せたがやトラスト」と共存させているために、公益法人の法人格をなかなか取れないという問題点もある。解体し、世田谷トラストを独立させるべきである。
また、この種の外郭団体には、区の役人が天下ったり、運営を牛耳っていたりして、市民主導の外郭団体となりえていない。
NPOの充実とその支援によって、代替可能なものが多数ある。お役人の天下り先や、業者・業界との迂回した癒着の温床となるような外郭団体は整理してしまうべきである。
6)福祉・教育・環境セクターへの人員配置を手厚く
行政人員は、ただ単に削減すればよいというものではない。福祉・教育・環境セクターなど、区民生活にとって必要不可欠なサービスは人材の質量とも充実させていく必要がある。
区民個々人の生活に深く関係するサービスは手厚くし、内容において本来的に公的に必要だとは言えないものとの仕分けを徹底し、不必要なものは削るべきである。
7)都市農業は区民の共通財産として企画を
生産緑地制度の形がい化がいわれて久しい。将来の宅地化のための猶予としての生産緑地制度になってしまっていることが問題だ。法整備も必要だろうが、生産緑地を農地として存続させるためには、宅地化への転用を認めず、都市型農業を希望する区民や法人が農業を存続させていくシステムをつくりあげていくべきである。レジャー農園としての活用も、もっと発展形を考えるべきである。
8)文化・文芸・知的活動の拠点をつくろう
現在の世田谷の図書館では読書会すら開けないシステムになっている。
子供の利用のみに焦点を当てるのではなく、大人どうしが知的文化的交流を深めるための空間の確保も必要だ。
図書館はレファレンスサービスなども充実させて、世田谷の知の拠点として整備し直す必要がある。
議会図書館を充実させるとともに、区立図書館とのネットワークを充実させたい。行政情報を区民共有のものとするために、アーカイビストを置くべきである。この人に聞けば、世田谷の区政の情報のありかはわかるという職制を置きたい。5年や10年で、ましてや半年で行政情報を捨てられてはかなわない。
2012年10月に区内の京王線連立事業の都市計画決定はされたが、この基礎資料でもあり国庫補助を受けて行われた「連続立体交差事業調査」の第一次分の報告書は事業地の当事者である世田谷区が求めたにもかかわらず、秘匿されたまま東京都によって2013年3月までに廃棄処分にされてしまったという。
都市計画の重要書類さえ捨ててしまうという文化は正されなければならないし、世田谷区は東京都に抗議し、資料の収集を要求すべきである。
9)都市間・地域交流は歴史に根差したものに
都市間交流はこれまでのものを継続するのもよいことではあるが、歴史に根ざした交流を探ってみたらいかがか。
世田谷は関東吉良の支配から後北条の支配、その後井伊家の領地となった歴史を持っている。江戸時代を通じて君臨した井伊家の本拠地彦根との交流は重要だろうし、井伊家ということであれば高崎も関係し、これは川場村ともつながってくる。佐野奉行が間接統治していたことからは栃木の佐野市との関係もある。江戸時代前の後北条関連では、小田原城、八王子城、江戸城、川越城、鉢形城、世田谷城といった関東北条サミット的な付き合いも出来る。
放射線量が高いということもあり、日光の林間学校に父母の危惧が持たれている。日光は東京からも近く、いずれ放射線問題が落ち着けばいつでも行ける距離にあるのだから、この際、修学旅行として、彦根市を中心に行き先を変えてみたらどうだろうか。
彦根城のみならず、琵琶湖沿いには安土桃山上城やその博物館もあり、歴史の勉強にも役立つと思われる。
10)海外都市との交流は実のあるものに
ウィーンのデュブリンク、カナダのウニペグ、オーストラリアのバンバリーと交流しているが、区民に認知度が低いのみならず、世田谷区行政としてもこれらの都市との交流について専門に担当しているセクションが見当たらない。何よりもこれらの地域の政治・文化・経済等についての情報集積をしなければ交流の意味もない。なお、交流先が「白人圏」に限られており、脱亜入欧の名残が見て取れる。交流先の見直しや拡大も含め、広く深く交流する環境と場や機会をつくるべきである。
2013年に区議会の内部にも、アジアとの交流を目指す議員の動きが超党派で生まれてきたことは、機運醸成に役立つであろう。
以上