まもれシモキタ!訴訟「和解」口頭弁論調書全文掲載 |
行政訴訟に和解はありうるのかという議論もある中、今回の裁判を「和解」に導くことになったのは昨年12月28日に,原告側が裁判所に提出した「下北沢再開発の『見直し』意見書」(福川意見書)にある。この意見書を裁判所が積極的に評価する和解勧告があり、これを世田谷区が受けることを表明して終結したということを国、東京都、世田谷区は肝に銘じていただきたい。3月30日の原告側陳述にある通り、原告市民は世田谷区の意思表明の内容が実現するように今後も運動と行動に取り組むことになる。
以下に3月30日の「第39回口頭弁論調書」を全文と3月16日の和解勧告時に裁判所から示された和解条項(案)を掲載しますが、この和解を可能にした「福川意見書」をぜひとも合わせ読んでいただきたい。リンクを張っておきましたので、クリックすれば読むことができます。
第39回口頭弁論調書
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裁判長証印
第 3 9 回 口 頭 弁 論 調 書
事 件 の 表 示 平成18年(行ウ)第467号,
平成19年(行ウ)第224号,
平成20年(行ウ)第108号,
平成27年(行ウ)第430号
期 日 平成28年3月30日午後3時00分
場所及び公開の有無 東京地方裁判所民事第2部法廷で公開
裁 判 長 裁 判 官 増 田 稔
裁 判 官 齋 藤 充 洋
裁 判 官 佐 野 義 孝
裁 判 所 書 記 官 小 島 和 亨
出頭した当事者等 別紙1「出頭した当事者等」のとおり
指 定 期 日 (口頭弁論期日 追って指定)
弁 論 の 要 領 等
被告東京都参加人世田谷区
別紙2のとおり陳述
原 告 ら
福川意見書の趣旨を踏まえて参加人世田谷区の意思表明がなされたものと理解した上,裁判所による平成28年3月16日付けの早期解決の勧告を尊重し,今後,上記意思表明の内容が実現するよう運動と行動に取り組むこととして,本件訴えを全て取り下げる。
裁判所書記官 小 島 和 亨
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別紙1 出頭した当事者等
原告ら代理人 斎 藤 驍
同 堂 野 尚 志
同 萩 原 健 二
同 武 内 更 一
同 森 近 薫
同 宮 村 啓 太
被告国指定代理人 早 田 祐 介
同 長谷川 武 久
同 堀 内 章 子
同 原 口 修 平
同 朝 津 陽 子
被告東京都代理人 今 井 克 治
被告東京都指定代理人 稲 田 優
同 青 木 那 和
同 佐久間 巧 成
同 武 田 憲 明
被告東京都参加人世田谷区指定代理
山 田 幸 男
同 富 沢 真 人
同 三 島 圭 太
以 上
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別紙2
原告らが,平成27年12月28日に,「下北沢再開発の『見直し』意見書」(福川意見書)を踏まえて,「原告らの和解に対するスタンス(和解案の概要)」を提案し,裁判所からは,本件紛争を円満に解決し,下北沢における道路整備及び街づくりに関するさまざまな意見の対立を超えて,自治の担い手である住民と行政の協働を形成することにより,下北沢の魅力を更に発展させていくことが大切であるとの認識の下に,平成28年3月16日付けで早期解決の勧告がなされたことを受けて,参加人世田谷区は,次のとおり,意思を表明する。
1 参加人世田谷区は,「防災とみどりの基軸づくり」をコンセプトとして,東京都及び小田急電鉄と協議,調整を経て,さらに区民の皆様からのご意見を受けまとめた「世田谷区小田急線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)上部利用計画」(以下「小田急線上部利用計画」という。)を基に,今後は,事業完了まで,小田急電鉄と調整しつつ,各事業者の設置する施設等が整合性をもって配置されることにより,駅を中心ににぎわいのある街づくりを目指し,区民等の憩いの公共的な空間となるよう整備を進めるものとする。
2 参加人世田谷区は,平成18年10月18日付けの事業認可処分に係る補助54号線(第Ⅰ期区間)及び区画街路10号線のうち,区画街路10号線については,「防災とみどりの基軸づくり」を基本コンセプトとする小田急線上部利用計画を基に,交通結節機能のほか,防災や環境も考慮した生活拠点にふさわしい機能を確保するとともに,補助54号線(第Ⅰ期区間)については,都市計画道路としての機能(交通ネットワーク機能,防災・災害対策機能,街の賑わいづくりの創出)を確保しつつ,周辺と調和した連続性のある街づくりを進めるものとする。また,これら都市計画道路における「道路占用許可の特例制度」については,既に検討に着手しており,「道路区間を活用したまちのにぎわい創出」を目指して,歩行者に配慮した活気ある街づくりを進めるものとする。
3 参加人世田谷区は,世田谷区の都市計画に関する基本的な方針である「都市整備方針」において “広域生活・文化拠点”として位置付けられている下北沢が,「生活と文化を育み,地域の“心”となる安全で住みやすいにぎわいの街」となるよう形成に努めるものとする。また,下北沢駅周辺においては,「下北沢駅周辺地区地区計画」に基づき適正に街づくりを進めるとともに,その街づくりの過程において,区民等の意見を幅広く頂きながら,下北沢の良好な街並みの維持・発展について必要な対応をするものとする。
以上
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これは謄本である。
平成 2 8 年 3 月 3 0 日
東 京 地 方 裁 判 所 民 事 第 2 部
裁判所書記官 小 島 和 亨 ㊞
<裁判所の和解勧告>
2016年3月16日、裁判所は以下の和解(案)を示し和解勧告を行った。
世田谷区は法廷で意思表明を行うこととし、原告側が訴えを取り下げることで和解となった。
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2016/03/16
和解条項 (案)
参加人世田谷区を施行者とする東京都市計画道路事業幹線街路補助線街路第54号線(以下「補助54号線」という。)及び同区画街路世田谷区画街路第10号線(以下「区画街路10号線」という。)等の都市計画事業に関し,原告らが,平成18年,その差止め等を求めて提訴してから,今日まで,当事者らが真塾な主張立証を尽くしてきたこと,原告らが,平成27年12月28日,「下北沢再開発の『見直し』意見書」(以下「福川意見書」という。)を踏まえて,「原告らの和解に対するスタンス(和解案の概要)」を提案したのに対し,参加人世田谷区が,平成28年3月11日,これを大局において是認するものと評価することのできる「回答書」を提示したこと等を勘案し,本件紛争を円満に解決し,下北沢における道路整備及び街づくりに関するさまざまな意見の対立を超えて,自治の担い手である住民と行政の協働を形成することにより,下北沢の魅力を更に発展させていくことが大切であるとの認識の下に,裁判所から和解勧告がされたことを受けて,原告らと参加人世田谷区は,次のとおり,和解する。
1 参加人世田谷区は,小田急線上部利用について,「福川意見害」の趣旨に留意するとともに,「防災とみどりの基軸づくり」をコンセプトとして,東京都及び 小田急電鉄と協議,調整を経てまとめた小田急線上部利用計画を発展させ,今後は,事業完了まで,小田急電鉄と調整しつつ,各事業者の設置する施設等が整合性をもって配置されることにより,駅を中心ににぎわいのある街づくりを目指し,区民等の憩いの公共的な空間となるよう整備を進めるものとする。
2 参加人世田谷区は,平成18年10月18日付けの事業認可処分に係る補助54号線及び区画街路10号線(第一期工区)について,「みどりの基軸」となる整備を基本コンセプトとする小田急線上部利用と調和した連続性のある街づくりを図るとともに,参加人世田谷区において既に検討に着手している「道路空間を活用して,まちのにぎわい創出等に資するための道路占用許可の特例制度」等を 利用して,歩行者が主体で活気ある街として,一体とした街づくりを進めるものとする。
3 参加人世田谷区は,下北沢の現在の低層の街並みが地区の生活と文化を育み, 下北沢を個性的で魅力のある街としていることに留意し,今後も,地域の“心” となる安全で住みやすいにぎわいの街の維持・発展に向け,下北沢の良好な街並みを維持しつつ,建築物の不燃化を適切に誘導するための街づくりを進めるとともに,その街づくりの過程において,区民参加ワークショップの開催等を通じて 区民等の意見を幅広く聴き,下北沢の良好な街並みの維持・発展について必要な対応をするものとする。
4 原告らは,被告東京都に対する本件各訴えを取り下げる。
5 訴訟費用及び参加に要した費用は各自の負担とする。
以上