9・17シンポ開催 ―― 保坂区長の新たな一歩に期待 |
下北沢再開発見直し和解から、これからのまちづくりを考える
9・17シンポ開催――保坂区長の新たな一歩に期待
「まもれシモキタ!行政訴訟の会」
事務局 木下 泰之
9月17日に保坂区長を囲んでの「世田谷のまちづくりを考えるシンポジウム」が三茶しゃれなあどホールで開催されました。この催しは2015年区長選の際に区長と政策協定を結んだ市民団体「新しいせたがやをつくる会」(旧「新しいせたがやをめざす会」)が主催。昨年は福祉問題を取り上げましたが、今年は都市計画やまちづくりを課題としました。
下北沢と二子玉川、いずれも再開発が進行中であるということから、それぞれの問題に市民側からかかわっている福川裕一さん(下北沢再開発の「見直し」オルタナティブ専門委員会委員長・千葉大学名誉教授・全国街並み保存連盟会長)と玉野和志さん(世田谷自治研副理事長・首都大学東京教授)に講演をしていただいたうえで、保坂区長、福川さん、玉野さんの三人をパネラーに、中村重美さん(世田谷地区労議長)が司会をする形で行われました。
下北沢再開発問題を巡っては、連続立体交差化事業による都市再開発問題として「建運協定」制度が整った1969年より高架反対・地下化推進の運動がおこり、その後1990年から始まる粘り強い裁判闘争を経て、下北沢の小田急線地下化は実現したものの道路新設を契機とした高層再開発が止まらなかったため、2006年以降新たな裁判が起こされていました。
裁判は10年を経ていましたが、福川裕一さんを委員長とする「下北沢再開発の「見直し」オルタナティブ専門家委員会」が昨年12月に裁判所に提出した意見書、いわゆる「福川意見書」を契機として、裁判所がこれを評価し和解勧告をおこない、これに準じた意思表明を被告東京都参加人の世田谷区が3月30日に公開法廷で行うことにより、行政訴訟としては異例の和解が成立。原告が訴訟を取り下げ、4月2日までに国と東京都がこれに同意して裁判は終わりました。
世田谷区の意思表明は「自治の担い手である住民と行政の協働を形成することにより,下北沢の魅力を更に発展させていくことが大切である」としたうえで、1、「世田谷区小田急線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)上部利用計画」を基に、・・・小田急電鉄と調整しつつ,・・・区民等の憩いの公共的な空間となるよう整備を進めるものとする。」 2、「『道路占用許可の特例制度』等を 利用して,歩行者が主体で活気ある街として,一体とした街づくりを進めるものとする。」 3、「下北沢の良好な街並みの維持・発展について必要な対応をするものとする。」というものでした。
下北沢再開発は小田急線連続立体交差事業に付随するものであることから、国や東京都の意向が反映されてきましたが、今回の和解は住民と基礎自治体の協働で街づくりの「見直し」に裁判所が「お墨付き」を与えたものとして注目されます。
シンポジウムでは保坂氏は八ッ場ダムの見直し問題を例に出して、一挙的な見直しは掘り崩されるとの理由から、漸進的な見直し方針をとる必要があるし、それまでかかわった方々の理解を得られる対案が必要だという趣旨のことを述べられました。これに対し福川さんが、それでは下北沢での対案を区長はどのように構想しているのかと問いかけたことが、今回のシンポジウムでのハイライトとなっていました。これに対し、保坂区長は高速道路をやめさせ成長限界をも念頭に置いたポートランドでの事例も参考にしながら、今後を考えていきたいと発言していました。
玉野さんからは、二子玉川の再開発については、既に進行中であるが、大企業を中心とした旧来型の大規模再開発から地域の個性や地場特性を生かした街の発展という世界的動向にそった街づくりに転換していくべきだとの提起もあり、世田谷区のまちづくりを考えていくために大きな示唆を与えるものとなりました。今後の、区長の奮闘に大いに期待したいものです。