「北沢PR戦略会議」第4回全体会への 「シモキタの新たな公共空間を再考する部会」からの報告 |
「北沢PR戦略会議」第4回全体会への
「シモキタの新たな公共空間を再考する部会」からの報告
「シモキタの新たな公共空間を再考する部会」世話人 木下泰之
「北沢PR戦略会議」の運営は
「住民と行政の協働」とは程遠い
既に9月10日に開催された第3回全体会の際、「シモキタの新たな公共空間を再考する部会」は「北沢PR戦略会議」での活動につき、区長が「裁判和解での区民との協働を果たす一つ場である」との認識を3月の区議会本会議で示したことを紹介したうえで、この「北沢PR戦略会議」や部会活動につき、世田谷区が2016年3月30日の公開法廷での意思表明で約束した「自治の担い手である住民と行政の協働を形成する」約束を履行するよう求めました。
残念ながら、裁判和解から1年半も経ているのに、「自治の担い手である住民と行政の協働」は形成されるどころか破壊されています。
3月23日付けで、区長に対して当部会は「喫緊の課題への要望と質問」を提出しましたが、結局この質問には正式な文書回答がありませんでした。
「北沢PR戦略会議」は区民の税金で運営されている公式な会議体です。
区民参加で運営されている会議体の部会からの質問状に区長が答えないということはあってはならないことだと思います。
また、必要な情報についての提供を渋る、当部会が情報に詳しいであろう担当部署の出席を求めても応じない、更には、当職員さえ参加するなという指令まで街づくり課長が出すというのは異常な事態だといわなけれんばなりません。
区は部会への必要な情報提供や説明責任を怠っている
当部会世話人として、この状況の打開のために、男鹿北沢総合支所長との交渉も求めましたが、部会との交渉は応じられないということなので、私は下北沢小田急線連続立体交差事業の行政訴訟原告団の承継組織である「区長とシモキタ開発見直しを協働する市民の会」(準備会)事務局長として11月2日に男鹿北沢総合支所長との面談を行いました。
しかしながら、北沢総合支所長の答弁は、「北沢PR戦略会議」はハード面の見直しを行う場ではないというものでありました。
詰めていくと、結局は2016年3月30日の公開法廷での意見表明についての区としての「解釈」によるものということがはっきりしました。
男鹿総合支所長はじめ区の「解釈」を総合すると、裁判は原告側が取り下げたのであって「和解」とは考えていないというものです。
一方で、その「解釈」を行政側は公式には語らない、語りたくないというのが、彼らの立場であるということもはっきりしました。
「和解勧告」受け入れや「和解」を否定するならば、
論理的な説明を示せ
2016年の裁判終結につき世田谷区が、「和解」と考えていないというならば、裁判所の和解勧告に応じて意思表明などするべきではありませんでした。司法との関係において、下北沢地区の行政訴訟に対して世田谷区長はどういう対応をしたのか、また、和解でもなく和解勧告も受け入れずに意思表明をしたというならば、その法的な解釈や根拠を論理的に示すべきです。
国会ではいわゆるモリカケ問題における特定個人や法人への恣意的な優遇対応の解明が焦眉の急となっていますが、小田急線連続立体交差事業は鉄道関連事業だけでも1600億円(計画時1350億円が2016年12月には250億円も膨らんでいる)もの巨大公共事業となっており、その税金の使われ方や事業の在り方はモリカケどころではない問題をはらんでいるとだけ言っておきましょう。
情報開示で分かったこと
既に商業地計画は連立協議会では提示
調査報告書で立体緑地の必要性は低い評価
さて、区側の当部会への対応が先に述べたような次第でしたので、当部会としては、世田谷区条例に従って情報開示させた情報を検討するという手法に頼らざるを得ませんでした。
9月15日と9月29日の二回に分けて木下は情報開示請求をし、11月10日までには要求資料が届きました。概ね開示ですが、一部非開示のところもありました。
今回の情報開示請求資料としては
1、上部利用計画にかかわる委託契約書とその成果物一切
2、平成25年10月以降の小田急線連続立体交差事業連立協議会の議事録及び資料一切
を請求しています。
以前に情報開示で入手していた平成25年10月以前の小田急線連続立体交差事業連立協議会の議事録及び資料一切の請求で開示されていた分も合わせ読みしました。
部会としてはこの情報公開資料を中心に検討し、幾つか重要なことがわかりましたので報告します。
毎年5月に小田急線連続立体交差事業協議会が開催されており、この協議会が事業全体を統括している会議体である以上、ここでの資料や議事録は速やかに議会にも市民にも提供されるべきものであると考えますが、そうはされてきませんでした。
直近の協議会は2017年5月に開催されており、ここでの資料を読むと、上部利用の内、小田急電鉄の土地利用プランの用途仕分けが、既にこの段階で提示されています。残念ながら、この協議会終了後も、このような基本情報は私たちに提供されぬばかりか、小田急電鉄が教えてくれないと区側からは言われてきました。
市民参加で街づくりを検討する際には、行政側から正確な資料を提供することが最低限の義務であると考えます。正確な情報が提示されない住民参加はそれこそ「ガス抜き」であり「自治の担い手である住民と行政の協働を形成する」には程遠いといっておかなければなりません。以下の7)と8)はとりわけ重要です。
1)熊本区政時の上部利用については、世田谷区は公租公課分プラスアルファで事業区全線を貫く4メートルの通路と一部小公園のみを区が受け持つことにしており、その余は小田急電鉄の事業に任せ、小田急電鉄との協議で緑化を増やすとし、駐輪場や駐車場も付置義務に沿って小田急側が行うことになっていた。その際に小田急電鉄が跡地に設置しようとしていたのは住宅と商業施設であったが、その中でも一番面積を多くとり設置しようとしていたのは住宅施設であり、小田急電鉄との調整で緑を増やすとしていたのはその住宅に見合った緑化と、駐輪場周辺の緑化いうことになっていた。
2)2011年の区長選で熊本区長から保坂区長に代わった。2012年7月に保坂区長が熊本案に変わるものとして新たに提唱したのは、熊本案に加えて、いくつかの小公園を増やしたことと鎌倉通り付近にイベント広場兼公園をつくろうというものであった。立体緑道についてはこの段階では小田急線電鉄側設置の駐輪場の上に立体緑地をつくろうというもので、鎌倉通りを超えて今企画されている鎌倉通り西側の駐車場まで立体緑地の回廊をつくろうというものでもなかった。また駐輪場上の立体緑地の提唱については鉄道事業地の強度などを把握したものではなく、駐輪場の上の緑化という案であった。
3)2012年7月の保坂区長の区案提唱については、同年8月8日の連立協議会の議事録を読むと、東京都と小田急電鉄がそろって世田谷区にクレームをつけている記述が見受けられる。このことは世田谷区議会でも、自民議員や公明党議員から問題にされていた。連立協議会で調整しない内から一方的に区案を発表したのはけしからんというクレームが東京都や小田急電鉄からつき、世田谷代田西側環七鉄道橋の歩道橋への切り替え工事についても、ペナルティを課すかのような圧力まで加えてきている。また、小田急電鉄からは同電鉄が設置を予定している施設も街づくりを考えたものであり、不利益を被るようであればそれに見合う補償を伴う代替措置を示すべきとの要求も見られる。しかしながら、世田谷区からは財政出動を考慮するという措置はその後取られていない。むしろ区の対応は補助金を得られる事業手法を探るというものであり、小田急線上部につき積極的な利用方法を財政出動まで含めて考えた形跡は見られない。
4)この当時の資料の中には、東京都が世田谷区に上部利用の企画を問い合わせ、それへの返答を東京都に返し、その計画を東京都が小田急電鉄と交渉するという模式図が示されているが、連立事業要綱(建運協定)の運用を模試図にしたもので分かりやすい。この模式図は上部利用の発案を行う主体が当該自治体であることを示すものであり、重要だ。なお、小田急線連立協議会規約には京王電鉄の参加も明記されている。京王線駅舎改良と土手を高架橋に切り替える事業は連立事業の一環であることを意味する。
5)上部利用については、この東京都と小田急電鉄による「恫喝」を受けてからは、利用計画について世田谷区自身かなり慎重な姿勢をとることになってきている。これは当時の区議会議事録で区の答弁を見ていくとよくわかる。その後のワークショップなどを経、連立協議会を経て、まとまった計画が2013年10月の上部利用計画(案)であり、現行計画の基礎となっているものである。この案はゾーン分けを明示してあり、この案は11月に小田急電鉄と共に記者会見を開いて公表している。
6)高架緑道計画は公表されたものの、橋梁の計画の具体化は世田谷区が責任を負わされる形となり、世田谷区は2013年8月23日付けで「下北沢~世田谷代田駅間の上部利用に伴う鉄道構造物の概略照査等業務委託」を皮切りに、その設計やその他の上部利用の設計と市民参加業務まで含む業務委託をパシフィックコンサルタントに行っている。
7)区が立体緑地を提唱することになり、その在りようや設計をパシフィックコンサルタンツに業務委託するようになったのだが、その報告書を読むと、パシフィックコンサルタンツとしては必ずしもこの計画が良い計画だとは言っていない。
2016年(平成28年)3月のパシフィックコンサルタンツの「下北沢駅西側小田急線上部利用施設基本計画及び住民参加検討会議運営委託」報告書3/3には以下の記述がなされている。
重要なので、テキストのみ以下に書き出しておく。
//////////////////////////////////////////////////////////////
1, 1計画周辺の現況と課題の整理
1-1-1.現況地形と土地利用、駅への想定アクセス等
・現状では隣接する街並みは計画地に背を向けた形になっており、接続する道路も限られているため、駅に向かうアクセスとしての使い勝手は悪い。
・こうした状況は次のページに示したとおりであり、そのため、通勤、通学導線としての利用しやすさ・使い勝手・魅力向上に向けて、特に重要なのが、下に示した計画地中央部に予定されている緑地・広場部の接続部分である。
(1)土地利用現況と駅へ想定の導線
・現況の周辺街路を利用した方が駅への到達距離が短いエリアが大勢を占める。また、改札口が1階地上レベルにのみ設置されるため、立体デッキにショートカット導線としての役割は期待できない。
・通学通勤での駐輪場利用者は、デッキを通過せず地上のみを利用することが想定される。
(2)白抜となっている・(*街づくり課担当に確かめたところ、原本の番号打ちのミスとのこと)
(3)現況地形と駅への想定導線(等高線図)
・地形的に見ても、計画地を経由するには、いったん谷筋に下ってから再度駅に向かって上がる形となる。更に小田急線利用者は、駅で再び地下に潜ることになるため、「遠回り」の感は否めない。
1-1-2 多様な利用展開・地区活性化に向けた資源などの状況
・前述の通り、周辺の経路配置(駅に向かう最短距離と街区の方向、計画地との接続状況等)及び周辺土地利用(戸建て住宅と小規模な集合住宅が大半を占める)を考慮すると、駅への通勤通学線として利用する住民等の範囲は限定される。
・したがって目的を持った機能導線としてよりも、むしろ計画地で過ごすことを楽しむ空間として、周辺の水と緑や歴史文化資源とのネットワーク形成も含めた「線的」な公園としての役割が期待される。
・併せて、演劇文化や若者の街としてにぎわう下北沢駅周辺および、世田谷代田駅と環状七号線周辺の商業施設と連携する地域の新たな地域活性化の軸としても期待される。
<以下略>
/////////////////////////////////////////////////////////////
8)南西口の周辺に商業施設の展開を予定している図面が2017年5月の連立協議会資料に見られる。利用用途としては商業地と住宅地が明確に分けられており、東北沢近くの北側段差の上には商業施設が予定されている。また立体緑地に隣接する土地の商業利用も明示されている。F1は立体緑地の北側の駐輪場、F2は井の頭線方面の土手側 F3は南西口南側、F2F3は高層ビルが建つ可能性あり。 図表については添付資料を参照されたい。
シモキタの公共空間再考に向けて
今回は情報開示に基づいての小田急線上部空間利用問題に焦点を当てたが、裁判和解後の区の対応につき残された2点の問題点を挙げておきます。
裁判所の和解勧告に従い下北沢再開発に当たって「下北沢の現在の低層の街並みが地区の生活と文化を育み, 下北沢を個性的で魅力のある街としていることに留意し」高層化を防ぐための対応をとれということが一点。幹線道路整備による60m・45mへの規制緩和はもっと低く抑えましょう。
また、裁判和解と合わせて東京都は補助54号線の2期3期について2016年度から優先整備路線としての位置づけを外しました。都市計画線は残っているものの再開発は事業認可された一期事業に限定された範囲で考えるしかなく、仕切り直しこそ必要だということがもう一点です。
2期3期事業を前提にしたバスベイや道路占用のロータリーの必要はなくなりました。閉ざされた道路空間は旧来計画の使い方から大きく見直すべきです。
以上